野鳥に国境は無い。この時季は多くの野鳥が海外から日本に渡り、また日本から海外へと渡って行く。
さて、今回はシベリアオオハシシギの後ろ姿。よく見ると、つぶらな瞳で愛らしい表情をしている。この日は終日曇っていて、翌日以降は晴れて来た。僕としては晴れている方が良かったのだが、プロからすれば晴れていると陽炎が立ってしまい、超望遠では条件が良くないらしい。逆光だと黒くシルエットの様になってしまう傾向もある。曇っている方が陰影も少なく、特徴が掴みやすいという面もあるだろう。結局このシベリアオオハシシギは5月4日まで十日以上も大阪南港野鳥園に滞在したそうで、その間のべ5日も撮影に通ったが初日の写真が最も近距離から綺麗に撮れた。
ちなみに5月7日には鳥取県米子市で発見され、山陰地方で初確認という事で地元の新聞各紙に掲載された様だ。こういう記事を目にすると、いかにこの鳥が凄い珍鳥かが窺い知れる。撮影難易度は星5個でも足りない程だ。改めて目撃出来た幸運を噛み締めたい。もちろん当の本人(鳥)は自分がそんなに珍しがられているとは知らないだろうから、多数の望遠レンズを向けられて「何事?」と思ったかも知れない。その希少性と日付の整合性から判断して同一個体の可能性もあるが、だとすると北上するには少々方向違いの様にも思う。日本に飛来した時点で本来のルートから逸れているとも考えられるが、大阪から米子では逆戻りに近い。一旦朝鮮半島に渡るつもりなのだろうか。日本海側を北上するなら、太平洋側より大都市圏を避けて通れるぶん危険が少ないかも知れないが、いずれのルートにせよ前途は多難だ。人間界の国境など悠然と見下ろして、何とか無事にシベリアまでたどり着いて欲しいと祈らずにはおれない。
分類:チドリ目 シギ科
全長:35.0cm
翼開長:不詳
分布:極めて稀な旅鳥。
生息環境:水田、干潟など。
食性:昆虫、甲殻類、貝類、ミミズなど。
レッドリスト:(DD)
フォトギャラリー:第46回・第47回参照
撮影難易度:★★★★★
シベリアオオハシシギ(夏羽)つづき
Asian Dowitcher
Limnodromus semipalmatus
撮影日:2010年4月23日
撮影時間:13時23分02秒
シャッタースピード:1/1250秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
シベリアオオハシシギ
第48回 2010年5月19日