図鑑の写真という基準で言えば、カワラヒワの写真は及第点だろう。「ピントが合っている」「手ブレしていない」「適正露出」という条件は当然として、「全身が写っている」「輪郭が明瞭」「遮蔽物や影が被っていない」「順光」「極端な陰影がない」「姿勢が不自然ではない」「アングルが不自然ではない」「構図が良い」「怪我や汚れがない」「背景が汚くない」「人工物がない」「余計なものが写っていない」等々。こういった条件を全部満たす、全てにおいてノーマルな写真は理想的だが、そう簡単に撮れるものではない。逆にこれらの条件が揃っていなくても面白い写真もある。幸いカワラヒワは警戒心が強くないので近くまで寄って来る事があり、シャッターチャンスに恵まれてハイレベルな写真を何枚も撮らせてもらっている。
「天は二物を与えず」と言うが、カワラヒワは翼や尾などに黄色い羽があって羽ばたくと綺麗なうえに、さえずりも鈴が鳴る様な美声だ。オオルリ、キビタキ、カワセミなどはもっとカラフルで鳴き声もずっと美しいが、なかなか姿を見せてくれない。カワラヒワはこの辺りでは年中いるようだし、人里の農耕地などで群れているのをよく見かける。羽ばたきと羽を閉じて放物線を描く動作を小まめに繰り返す波型の飛翔をしながら、羽ばたきの時にリリリリリッと鳴くので容易に見分ける事が出来る。但し近縁のマヒワと見間違える事があるので要注意だ。
カワラヒワなど小鳥の群れが近くにいると、猛禽類が現れた時のアラーム代りになる事がある。木に群れていたカワラヒワがパニック状態になって蜘蛛の子を散らす様に四方に逃げたので、見上げると背後からオオタカと思われるタカが低空を直線的に飛来した事があった。タカが上空高い所を滑翔している時は小鳥よりもカラスが騒ぐ事が多いが、カラスは飛行機でも騒ぐ事があるので“誤報”に惑わされる事も多い。だが長時間待機していて集中力が切れそうな時は気分転換にもなり何かと重宝する。一方でヒヨドリなどがこちらの存在を警戒して騒ぐと、他の野鳥が逃げてしまう事もある。
シメはカワラヒワと同じアトリ科だが習性は若干異なる。この写真は年の瀬に撮影したもので、大阪では冬鳥と思われる。カワラヒワと比べるとあまり活動的ではなく、このように木の頂部に止まってじっとしている事が多い。こうしている時のシルエットに特徴があり、かなり遠くからでも見分けられる事がある。このように落葉樹に止まる冬鳥の写真は地味になりがちだが、葉に邪魔されないので夏鳥と比べると撮り易い。葉が茂って来るとなかなか野鳥の姿を捉える事が出来ないうえに、林の中が暗くなるので春から秋にかけては思いのほか苦戦する。ただ、うまく撮れると若葉や花なども写って絵的に綺麗になる事もある。
分類:スズメ目 アトリ科
全長:19.0cm
翼開長:31.0cm
分布:全国で冬鳥または漂鳥。
生息環境:平地~山地の林など。
食性:種子、木の芽など。
フォトギャラリー:初登場
シメ
Hawfinch
Coccothraustes coccothraustes
撮影日:2008年12月27日
撮影時間:12時13分16秒
シャッタースピード:1/1250秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:スズメ目 アトリ科
全長:15.0cm
翼開長:24.0cm
分布:九州以北で留鳥または漂鳥。
生息環境:平地~山地の林、農地など。
食性:種子、木の実など。
フォトギャラリー:初登場
カワラヒワ(雌)
Oriental Greenfinch
Chloris sinica
撮影日:2009年5月27日
撮影時間:13時50分25秒
シャッタースピード:1/500秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
カワラヒワ シメ
第14回 2009年5月31日