ツバメは昔の東海道本線の特急や、現在の九州新幹線の愛称になるほど速い鳥の象徴であり、人家の軒下などに営巣するほど身近な鳥である。数羽で編隊を組み高速で飛翔しながら空中で昆虫などを捕食する。最高速度は時速200kmに達するとも言われるうえに高速を維持したまま急旋回するから、飛翔中を撮影するのは至難の技だ。この様な敏捷な飛翔は、剣術の「燕返し」に譬えられる程だ。だが、巣は手が届きそうな所にあるから営巣や給餌の撮影は拍子抜けするほど易しい。人間のそばに巣を作る事により、天敵のヘビやカラスなどから卵や雛を守る。農家にとってもツバメは害虫を駆除してくれる益鳥なので、立派に共生しているという訳だ。
この写真は水田に巣材の泥を集めに来た所だ。普段ツバメは電線や枝に止まるので、巣作りのために泥を取る時以外は滅多に地面に降りる事はない。この時期にしか見られない決定的瞬間だ。中国の高級食材「ツバメの巣」は洞窟に棲むアマツバメが口から出す分泌液で作るもので、このツバメの巣とは全く別物だから、そんな人は居ないと思うが間違っても泥で出来たツバメの巣を料理しない様に。そもそもアマツバメ科はアマツバメ目で、スズメ目のツバメ科とは遠縁で、むしろブッポウソウ目などと近縁とされる。ツバメよりカワセミの方が近いのだ。
コシアカツバメはツバメに比べると局地的に飛来するらしい。飛翔中は見分けにくく、撮影後に気付いた。2000分の1秒で流し撮りしたから、さしものコシアカツバメも静止して見える。ツバメ科は燕尾と言われる独特の長い尾羽が有名だが、ツバメとコシアカツバメ、アカハラツバメ以外はそれほど長い尾ではなく、コシアカツバメの尾は日本産ツバメ科の中で最も長い様だ。
ところでツバメは最速の野鳥かと言うと、野鳥の飛翔速度は計測が難しいため諸説あるうえ、水平速度と降下速度は単純比較出来ないから確定的な事は言えないのだが、一説によると最速記録を誇るのはハヤブサの急降下記録で時速387kmだ。水平速度ではハリオアマツバメの時速350kmと言われるが、確実な記録はせいぜい170kmという説もあり疑問視されている。一応急降下で速いのはハヤブサ科、大型のタカ科、水平速度ではアマツバメ科、ツバメ科が名を連ねる様だ。水平速度が速く小回りも利くからツバメの成鳥はタカを恐れる事は無いし、タカも最初から追う気は無い様だ。なお、世界最速説もあるオオグンカンドリには時速418kmという記録もあるが、154kmという説もあって幅が有りすぎ信憑性に欠ける。ツバメも普段見ている限りは200kmも出ている様には見えないから、追風参考記録なのかも知れない。だが、並の野鳥と比べるとずば抜けて速い事だけは確かだ。
分類:スズメ目 ツバメ科
全長:19.0cm
翼開長:32.0cm
分布:九州以北で夏鳥。一部越冬。
生息環境:住宅地、農耕地、海岸など。
食性:昆虫。
フォトギャラリー:初登場
コシアカツバメ
Barn Swallow
Hirundo rustica
分類:スズメ目 ツバメ科
全長:17.0cm
翼開長:32.0cm
分布:九州以北で夏鳥。一部越冬。
生息環境:住宅地、農耕地など。
食性:昆虫など。
フォトギャラリー:初登場
撮影日:2009年4月22日
撮影時間:13時38分15秒
シャッタースピード:1/2000秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ツバメ
Red-rumped Swallow
Hirundo daurica
撮影日:2009年5月9日
撮影時間:13時29分48秒
シャッタースピード:1/2000秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ツバメ コシアカツバメ
第11回 2009年5月25日