前々回のサンコウチョウも科としてはマイナーだが今回のカワガラスは更に少数派で、カワガラス科は世界に5種、日本ではこの1種のみだ。勿論カラス科ではなく、黒っぽい羽色からこの名が付いているだけで習性は大きく異なり、縄張りの渓谷をカワセミみたいに行ったり来たりしながら水生昆虫などを捕食する。その羽色も光線の当たり方によってはもう少し茶色味が有る。水中に潜水して翼で泳いだり水底を歩いたりする珍しい習性を持つが、水中カメラでも無い限り撮影は無理だ。地鳴きはセキレイ科を彷彿とさせるが、飛び方は波型ではなく直線的だ。残念ながらこの日は複雑で美しいと言われるさえずりは聞けなかった。
京都府下に有るこの渓谷は鬱蒼として暗く、今回もD40の限界を感じる撮影条件だった。実際の明るさは、この写真よりもだいぶ暗い印象だ。これ以上シャッター速度を遅くしたりISO感度を上げたりする訳にも行かず、かなりのアンダーになってしまったのを画像処理で無理やり補正したが、黒ツブレだけはどうしようも無い。丸一日近くカメラを構え続けた割には、当然の事ながら絵的にも黒っぽい地味な写真となってしまった。
この渓谷では敢えて他に狙う鳥も居なかったが、思いがけず目の前の枝に第1回夏羽と思われるオオルリが止まってくれた。第1回夏羽とは生まれた翌年の夏羽の事で、正面からでは分からないがこの個体は翼に褐色羽が残っており、おそらく去年生まれの若鳥と思われる。明らかにこちらの存在に気付いてからも、ひとしきりさえずってなかなか逃げようともしなかったが、下流に飛び去ってからは二度と姿を見せてくれなかった。ここが縄張りの一部だとすればカワガラスと交錯している事になるが、オオルリはカワガラスほど渓流に依存していないし、水中に潜ってまで採餌する事は無いので競合しないのだろう。むしろ上流で見掛けたキセキレイの方がカワガラスを脅かす存在に思えた。
ここはさほど広範囲に広がる渓谷でもないのだが、野鳥の他にも足元でヤマカガシが蛙を捕食する等それなりに想定外の事が起きて、ここにもたくましい自然が息づいている事を教えてくれた。

キセキレイ:フォトギャラリー第45回参照
初歩のバードウォッチング:生息環境参照
分類:スズメ目 ヒタキ科
全長:16.0cm
翼開長:27.0cm
分布:九州以北で夏鳥。
生息環境:平地~山地の川沿の林など。
食性:昆虫、蜘蛛、木の実など。
フォトギャラリー:第9回参照
撮影難易度:★★★☆☆
オオルリ
Blue-and-white Flycatcher
Cyanoptila cyanomelana
撮影日:2011年8月10日
撮影時間:14時04分03秒
シャッタースピード:1/20秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:800
撮影地:京都府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:スズメ目 カワガラス科
全長:22.0cm
翼開長:31.0cm
分布:九州以北で留鳥。
生息環境:平地~山地の渓流、河川など。
食性:水生昆虫、魚類、甲殻類など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
カワガラス
Brown Dipper
Cinclus pallasii
撮影日:2011年8月10日
撮影時間:10時50分26秒
シャッタースピード:1/40秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:800
撮影地:京都府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
カワガラス オオルリ
第67回 2011年9月14日