何の変哲も無い地味なカモ。実はこう見えて日本では大変珍しい迷鳥だ。
この日、僕は琵琶湖東岸の「湖北野鳥センター」を初めて訪れ、ショウドウツバメなどを撮影していた。そこでこのメジロガモ情報を得て予定を変更し、急遽西岸の「新旭水鳥観察センター」に移動する事にした。自分ひとりで野鳥を探すのも楽しいが、やはりいろいろな所から情報を得るのも大事だ。あいにくその観察センターは閉館中で無人状態だったが、敷地内から湖面を望む事が出来た。聞いた話ではメジロガモはキンクロハジロの群れの中に紛れているとの事だった。ところが見える範囲には沢山いるはずのキンクロハジロの姿は無く、期待は失望へと変わりかけた。だが望遠レンズを覗いて間もなく、はるか100メートルほど沖の水草の中に黒っぽい塊がポツンと一つ浮いているのが見て取れた。虹彩の白いその鳥は紛れも無く目当てのメジロガモだった。たった1羽で潜水と羽繕いを繰り返している。広い琵琶湖の中で、敢えてこの狭い範囲に居続けなければならない理由は無いはずだ。よくぞキンクロハジロと共にどこかへ飛び去らず、ここに残っていてくれたものだ。
ご存じの様に野鳥は季節ごとの生息域の移動により、通年見られる「留鳥」、国内を移動する「漂鳥」、春から秋にかけて見られる「夏鳥」、秋から春にかけて見られる「冬鳥」、春と秋に日本を通過して行く「旅鳥」に分類される。ところが余りにも渡来数が少なく、上記のいずれにも分類されないのが「迷鳥」と呼ばれる野鳥たちだ。
メジロガモもその迷鳥の中の一つだが、過去に福岡県や千葉県などで記録が有り日本の野鳥として鳥類目録に記載されている。迷鳥を見たのは初めてだし、勿論「フォトギャラリー」初登場だ。通常メジロガモは東欧、中近東からチベットで繁殖し、冬は北アフリカやインド、ミャンマーなどへ渡るとされる。迷鳥とは何らかの偶発的な要因で本来の渡りルートから外れた者の事で、日本への渡来数は皆無に近いものの世界的に稀少でない場合は絶滅危惧とは見なされない様で、一部を除きレッドリストには載っていない。但し迷鳥という分類は人間が決めた事であって、どこからが迷鳥でどこまでが迷鳥でないのか、実は道に迷ったのかどうかさえ野鳥に聞いた訳ではないので何の確証も無い。むしろ大抵の絶滅危惧種や天然記念物より渡来数が少ない珍鳥なのに、単に迷鳥というレッテルを貼られるのはメジロガモにとっても不本意な話なのかも知れない。
分類:カモ目 カモ科
全長:40.0cm
翼開長:63.0~67.0cm
分布:迷鳥。
生息環境:湖沼、河川など。
食性:水草、貝類、甲殻類など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★★
メジロガモ
Ferruginous Duck
Aythya nyroca
撮影日:2011年8月17日
撮影時間:15時34分40秒
シャッタースピード:1/125秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:400
撮影地:滋賀県
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
メジロガモ
第66回 2011年8月19日