これらの鳥はコウノトリを撮影した日に公園内の丘で見つけた。公園内と言ってもコウノトリの為に意識的に里山が維持された普通の雑木林で、いたる所に鹿の糞が落ちていた。丘の上まで登って来る人は居なかった。
ところで近畿地方は概ね3つの気候区分に分けられる。大阪平野周辺の瀬戸内海型気候、和歌山県と奈良県の一部にまたがる太平洋側気候、そして滋賀県、京都府、兵庫県の北部にまたがる日本海側気候だ。ここ兵庫県豊岡市は日本海側気候に属するので、瀬戸内海型気候の大阪とは植生を始めとした生態系がやや異なる。従って鳥類の分布状況も微妙に違う様だ。今回はいつも通りトビが多いと感じた程度だが、冬季の寒さや海岸線に自然が残る地域性からか、水鳥を中心に独特の鳥類分布が見られる様に思う。
エゾビタキは「蝦夷鶲」と書くが、むしろ南へ行くほど数が多いらしい。雌雄同色で地味な色だ。明るい疎林の中でじっと立っていたら、どこからともなく現れて目の前の樹上でひとしきりさえずっていた。最短で5メートルくらいまで寄って来た。僕の撮影スタイルにピッタリはまってファインダーに納まってくれた訳だ。こういう時にはひとしお親近感が湧く。ゆっくり滞在して欲しいが、旅鳥だから春と秋しかいない。今は秋だから南へ移動中のひとコマだ。
コサメビタキは怖いくらいエゾビタキと似ていて、この写真はピントもやや甘いので実は同定に自信が無い。同じヒタキ科のキビタキやオオルリの雌、サメビタキとも似ているので、間違ってないか不安だ。サメでもないのに、なぜか「小鮫鶲」と書く。雌雄同色でメジロほどはっきりしないもののわずかにアイリングが有るが、オオルリやキビタキとは対照的に色もさえずりも地味な鳥だから、よほどアップで撮らないと同定が難しい。大阪でも撮影した事はあるが、そんな訳で写真は未公表だ。コサメビタキと判断した理由は、エゾビタキと比べての縦斑が不明瞭だから。また、の周りの他に眼先も白っぽいとされるが、この写真ではエゾビタキとの差異は分かりにくい。夏鳥だから間もなく南へ渡ってしまう筈だ。
オオルリやキビタキは暗い林に居る事が多いようだが、エゾビタキとコサメビタキは枝先など明るい林縁部を好むらしいから、アップにこだわらなければ撮影自体は困難ではない。ただし保護色だし特徴的な鳴き声でもないから身近に居ても気付きにくい。いろんな鳥のさえずりをある程度聞き分けられないと、これらの鳥の鳴き声も聞き逃してしまう可能性が高い。そういう意味では狙って撮るのは難しいかも知れない。それに撮れたところで地味な事に変わりはない。派手な有名人タイプではなく目立たない裏方の様な鳥たちだ。だが綺麗な鳥ばかりが野鳥ではない。エゾビタキやコサメビタキを愛する人がいたら、本格的な野鳥ファンと言えるだろう。
分類:スズメ目 ヒタキ科
全長:13.0cm
翼開長:21.5cm
分布:九州以北で夏鳥。
生息環境:平地~山地の林など。
食性:昆虫、木の実など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
コサメビタキ
Asian Brown Flycatcher
Muscicapa dauurica
撮影日:2009年9月25日
撮影時間:13時15分00秒
シャッタースピード:1/800秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:兵庫県
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:スズメ目 ヒタキ科
全長:15.0cm
翼開長:26.0cm
分布:全国で旅鳥。
生息環境:平地~山地の林など。
食性:昆虫、木の実など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
エゾビタキ
Grey-Streaked Flycatcher
Muscicapa griseisticta
撮影日:2009年9月25日
撮影時間:13時01分23秒
シャッタースピード:1/2000秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:兵庫県
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
エゾビタキ コサメビタキ
第28回 2009年9月29日