「何となく」そんな気がした。前回(フォトギャラリー第12回参照)と同じポイントで7時間以上もオオタカの飛来を待ち続けた揚げ句、陽も陰って来たのであきらめて帰ろうと歩き始め、20メートルほど歩いた所で「何となく」感じるところがあって立ち止まり、再び空を見上げて数分たった時、オオタカは現れた。しかもかなりの大物を仕留めている。イタチの様にも見えるが、よく分からない。捕食されたものにとっては厳しい自然界の掟だ。
何時間も虚空を見上げていると、この空にタカが飛んで来るとは信じられなくなる。きわどいところで危うく見逃すところだった。幸運な時は不思議なもので、少し歩いた分、かえって良いアングルで撮影出来た。もと居た場所だったら後ろ姿しか見えなかった。が膨らんでいるから既に満腹の筈だが、まだ足りないらしい。このポイントには1週間で4回撮影に行き、うち3回オオタカが現れた。おそらく雄の同一個体だ。出現頻度が高いという事は巣が近いのかも知れない。今回こちらの姿をまともに見られた可能性が高いので、むやみに刺激しない様、次回からもっと慎重に行動せねばならない。
「何となく」と冒頭に書いたが、この根拠のない感覚は弱肉強食の世界では生死を分けるほど大きな意味を持つ。第六感の働くものは未然に危険を察知し、あるいは獲物の行動を予見し、適者生存の法則により生き残れる可能性が高まる。「虫の知らせ」などと言うが、理屈では説明のつかない予感や直感が働く事がある。もともと勘は鋭い方だが、最近頻繁に山歩きをする様になって自然界の野鳥を相手にするうちに、もしかしたら野生の勘が磨かれて来たのかも知れない。複数の撮影ポイントの中から当日の行先やルートを選ぶ時も、いろんな要素を比較検討しつつ最終的には直感に頼る部分が大きい。仕事でも何でも、経験に裏打ちされた「何となく」という感覚は意外に重要だ。これが結構当たるのだ。車を運転中に嫌な予感がして事故を免れた事も何度かある。複雑な理論がいつも正しいとは限らない。いや、むしろ「何となく」という直感こそが、非常に複雑で高度な情報処理を無意識的に演算した結果ではないかとさえ思う。野鳥たちもきっと、小理屈ではなく研ぎ澄まされた「何となく」に自らの生き残りを賭けているのに違いない。
分類:タカ目 タカ科
全長:雄50.0cm 雌58.5cm
翼開長:105.0~130.0cm
分布:四国の一部、本州、北海道、九州で繁殖。留鳥。
生息環境:森林。都市植林。
食性:鳥類、両生類、小型哺乳類など。
レッドリスト:
準絶滅危惧(NT)
フォトギャラリー:第1回第12回参照
オオタカ
Northern Goshawk
Accipiter gentilis
撮影日:2009年6月2日
撮影時間:17時17分53秒
シャッタースピード:1/1250秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
オオタカ
第15回 2009年6月4日