5月22日は「国際生物多様性の日」だそうだ。生物種とその生息環境の保全などを目的とした「生物の多様性に関する条約」を記念した国際デーとの事。
さて前回強い逆光の写真となったハチクマだったが、今回は順光での撮影に成功した。しかも羽の色や損傷状態が違うから、明らかに前回とは別の個体だ。ハチクマの羽色は個体差が大きく、暗色型、淡色型、中間型とあり、前回は暗色型、今回は淡色型である。前回も今回も翼の後縁が太い黒なので雄と見られるが、今回の様に淡色型の雄は珍しいとされている。ハチクマ自体が珍しいのだから、これは相当希少な個体だ。
これらの2羽はいずれもトビの様に螺旋状に帆翔しており、滞空時間が長かったので比較的余裕を持って撮影出来た。撮影ポイントは数百メートル異なるが、ハチクマの行動半径からするとほぼ同じ地点と言える。つまり同じ空域に別々の雄が飛来しているという事だ。余程好立地の餌場なのだろうか。ハチクマと言いサシバと言い、微妙に食性の異なる多様なタカ科の相次ぐ飛来は、このエリアの特異性を物語っている。この貴重な生息環境は是非とも保全して欲しいものだ。
ところで猛禽類の両目は明確に前方を向いているのだが、ハチクマの目はやや側面を向いている様に見える。鳥類に限らず多くの肉食獣に共通する特徴は、獲物の位置を立体視するために両目が顔の前面に付いているという点なのだが、ハチクマの場合はやや顔の側面に寄っており、他のタカと比べると少し視野が広いのではないだろうか。前回の後方からの写真の方が、その微妙な特徴が分かりやすい。他のタカをあの角度から見ると眼窩が完全に死角になる。勿論ハチクマも前方を立体視する事は出来る筈だが、指向性は弱い可能性がある。だが飛翔中の蜂を見付けて追跡する視力は凄い。タカ科の目は望遠鏡の様に遠方を見る事が出来る構造になっていて、視力は8.0とも言われる。今回の使用レンズは実質600mmの超望遠だが、望遠鏡に置き換えるとD40装着時の倍率が概ね8倍前後、視力8.0相当だ。つまりタカは裸眼でこちらの事を同じくらい明瞭に見分けているという事になる。想像以上に恐るべきハンターだ。この事実は、タカ科の観察をする時には充分に距離があると思っても細心の注意が必要という事を示唆している。信じられないくらい遠方から注視されている可能性が高いからだ。我々が野鳥を観察しているだけではない。野鳥もまた我々を観察しているのである。
分類:タカ目 タカ科
全長:雄57.0cm 雌61.0cm
翼開長:121~135cm
分布:北海道~九州で夏鳥。
生息環境:山地の森林。
食性:蜂などの昆虫、爬虫類、両生類、鳥類。
レッドリスト
準絶滅危惧(NT)
フォトギャラリー:第7回参照
ハチクマ(淡色型・雄)
Honey Buzzard
Pernis ptilorhynchus
撮影日:2009年5月18日
撮影時間:14時11分57秒
シャッタースピード:1/1250秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ハチクマ
第10回 2009年5月22日