あれがそうだと教えてもらわなければ、絶対に気付く事は無かった。こうして写真にして見ても残念ながら全くそれとは分からない。証拠写真にもならないが、これがメジロガモ以来の「フォトギャラリー」2羽目の迷鳥、ヨーロッパトウネンだ。ヨーロッパの名を冠している事から察しが付く通り、主な繁殖地は日本から遠く離れた北欧からシベリアの極地で、アフリカからインドで越冬するが、その内の1羽がどういう風の吹き回しか大阪南港野鳥園に飛来した。トウネンとの違いは非常に微妙で、嘴がやや細めで先端が膨れている事と、人間の脛に相当する跗蹠(フショ※)の部分が長い点が異なるそうだが、厄介な事に個体によっては跗蹠が短い者もいるとの事で、長ければヨーロッパトウネンと判断出来るが、短ければ必ずしもトウネンという訳ではなく決定的な相違点ではないそうだ。また、真冬であればトウネンの可能性は少ないものの、9月のこの時季は同定が更に難しいそうだ。だが言われて見れば2枚目の写真は跗蹠がすらりと長い様に見える。この日はトウネンの群れに混ざる事も無く単独行動で遠方の岸辺を歩き回り、とうとう近くに寄って来ずじまいだった。そして結局この日が最初で最後となり何処かへ飛び去ってしまった。
一方のトウネンは干潟ではごく有り触れた小型のシギで、毎年春と秋には数十羽単位の群れが観察出来る。しかし近年は減少傾向に有るらしく、いずれ居なくなってしまうのではと心配する声も聞かれる。この写真は去年の同時季に大阪南港野鳥園で撮ったものだが、小さいので相当近くに寄って来ないと、これ以上の解像度で撮影するのは難しい。何百枚も撮影した中で一番良い写真を選んでようやくこの画像だ。ヨーロッパトウネンと比べると、なるほど確かに跗蹠が短い様に見える。採餌中はほとんどいつもせわしなく歩きながら餌を探して嘴を水中に入れているので、小休止する時や何かに警戒する時を除いて、この様な姿勢でじっとしている事は少ない。警戒態勢の時は群れが全て同じ方向を向いて立ち、飛び立つ時も一斉に同じ方向へ飛び、群れで上空を旋回してまた戻って来る。
ヒバリシギも外観や習性がトウネンとよく似ており、教えてもらうまで全く気付かなかった。トウネンよりも眉斑が明瞭で白っぽいのが見分けるポイントだ。トウネンの様な大群にはならず、数も多くはない。この日も1羽だけが単独でトウネンの群れの近くにいた。
トウネンに似ていると言えばキリアイも遠目にはよく似ており、トウネンの群れの中に紛れ込んでしまうと気の遠くなる様な探索をしなければ見つからない。ただ、完全に群れの中心に入り込む事は少なく、やや端の方にいる事が多い様だ。この様な夏羽が日本で観察出来るのは珍しいそうで、白く明瞭な眉斑と頭側線が特徴だ。4月初旬から何度か観察出来たが同一個体なのかどうかは確認出来ていない。
今回紹介した鳥たちはいずれもスズメ大で、広い干潟の先にいるとなかなか絵にならないし見分けるのも大変だ。彼らは小さい故に異種同士であっても群れになって身を守っている事が多い。その中心的存在としてトウネンの群れが果たす役割は無視出来ない。トウネンの減少は、すなわちトウネンと混群を成す他のシギたちの減少をも意味するのではないだろうか。
(※)跗蹠:フショウ、フセキとも読む。
メジロガモ:フォトギャラリー第66回参照
類似種の識別:トウネンとヒバリシギ・トウネンとヨーロッパトウネン・オジロトウネンとトウネン・オジロトウネンとヒバリシギ参照
分類:チドリ目 シギ科
全長:16.0cm
翼開長:37.0~39.0cm
分布:北海道、本州で旅鳥。
生息環境:水田、河川、干潟など。
食性:甲殻類、貝類、ゴカイ、ミミズ、幼虫など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
キリアイ
Broad-billed Sandpiper
Limicola falcinellus
撮影日:2011年5月6日
撮影時間:16時09分16秒
シャッタースピード:1/40秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:200
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:チドリ目 シギ科
全長:14.0cm
翼開長:26.0~31.0cm
分布:水田、河川、干潟など。
生息環境:全国で旅鳥。
食性:甲殻類、貝類、幼虫など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
ヒバリシギ
Long-toed Stint
Calidris subminuta
撮影日:2010年9月7日
撮影時間:11時24分46秒
シャッタースピード:1/125秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:200
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:チドリ目 シギ科
全長:15.0cm
翼開長:29.0~33.0cm
分布:全国で旅鳥。
生息環境:水田、河川、干潟など。
食性:甲殻類、貝類、幼虫など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★☆☆☆
トウネン
Red-necked Stint
Calidris ruficollis
撮影日:2010年9月7日
撮影時間:11時48分19秒
シャッタースピード:1/160秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:200
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:チドリ目 シギ科
全長:14.0cm
翼開長:28.0~31.0cm
分布:迷鳥。
生息環境:水田、河川、干潟など。
食性:昆虫、ゴカイなど。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★★
撮影日:2011年9月8日
撮影時間:12時44分30秒
シャッタースピード:1/320秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:400
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ヨーロッパトウネン
Little Stint
Calidris minuta
撮影日:2011年9月8日
撮影時間:11時36分23秒
シャッタースピード:1/320秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:400
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ヨーロッパトウネン トウネン ヒバリシギ キリアイ
第68回 2011年9月21日