先頃、東京都の平成23年版レッドリストでシマハヤブサが絶滅(EX)に分類されるというショッキングなニュースが報じられた。小笠原諸島などに生息すると推定され、環境省レッドリスト2006年版では絶滅危惧ⅠA類に分類されているが、第二次大戦後一度も確認されていないとの事で、そう言われてみれば残念ながら生存している見込みは無いだろう。もう二度とこんな悲劇は耳にしたくないものだ。
そんな訳で今回は大阪南港野鳥園でのハヤブサ科2コマ。
ハヤブサは稀にここへ姿を見せる。この個体はに縦斑が有る事から幼鳥と思われるが、去年の9月と12月、今年の2月には成鳥を撮影しており、複数の個体がここに飛来している事になる。この日はカモメの若鳥などを狙って急降下と滑空を繰り返していたが、若くて狩りが巧くないせいか全てかわされ失敗に終わった。水面に浮かぶオナガガモの群れに至っては襲われそうになっても全く飛び立とうともしなかった。一説にはハヤブサは飛翔中の野鳥に突進して捕獲する狩りをするので、水面に浮かぶ獲物を捕らえるのは苦手だと言われる。カモたちもそれを知っているのだろうか。それでも2度ほど観察窓のすぐ外の手を伸ばせば届きそうな至近距離を高速で横切り、「風切り音が聞こえた」などとバードウォッチャーたちの歓声を誘った。この写真はその様な高速での飛翔中ではなく、空中で静止するハンギングをしている所だ。チュウヒの1.5倍も体重が有るというが、海からの強い風を巧く受けてほとんど羽ばたかずに静止していた。
一方チョウゲンボウはたまに姿を見せてくれるものの、飛来してもすぐに飛び去ってしまうのでシャッターチャンスは少ない。しかも飛翔能力が高く動きが激しいうえにキジバト大なので、飛翔写真の撮影は容易ではない。チョウゲンボウのハンティングは急降下でスピードに乗るハヤブサとやや異なり、空中で静止した状態で地上の獲物を狙い素早く襲い掛かるのを得意とする様だ。この日はたまたま観察所の真上でハンギングしてくれたので、わずか数メートル程の至近距離で撮影出来た。羽色から雌と思われる。チョウゲンボウのハンギングは実に器用で、強風下でも空中の一点で見事に静止して地上の獲物を探す。このあと草地に降りてバッタを捕らえ、飛びながら食べていた。別の撮影ポイントでは木に止まって逃げない個体を至近距離で撮影した事もある。おしなべて人間をあまり警戒しない様だから、その様なチャンスに恵まれれば案外容易に撮影出来る事も有る。

初歩のバードウォッチング:飛び方参照
分類:タカ目 ハヤブサ科
全長:雄33.0cm 雌38.5cm
翼開長:68.5~76.0cm
分布:全国で留鳥または冬鳥。
生息環境:平地~山地の草原、農耕地、河川など。
食性:鳥類、小型哺乳類、昆虫など。
指定:
天然記念物(長野県十三崖のチョウゲンボウ繁殖地)
フォトギャラリー:第37回第43回参照
撮影難易度:★★★★☆

チョウゲンボウ
Common Kestrel
Falco tinnunculus
撮影日:2010年8月14日
撮影時間:12時15分39秒
シャッタースピード:1/500秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:タカ目 ハヤブサ科
全長:雄42.0cm 雌49.0cm
翼開長:84.0cm~120.0cm
分布:全国で留鳥または漂鳥。
生息環境:海岸、河川、農耕地など。
食性:鳥類など。
レッドリスト:
絶滅危惧Ⅱ類(VU)
フォトギャラリー:第35回第36回参照
撮影難易度:★★★★☆
ハヤブサ(幼鳥)
Peregrine Falcon
Falco peregrinus
撮影日:2011年1月18日
撮影時間:12時25分46秒
シャッタースピード:1/160秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:200
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ハヤブサ チョウゲンボウ
第69回 2011年10月4日