ハヤブサの分類はタカ目だが、タカ科ではなくハヤブサ科だ。タカ科の場合は初列風切の分離枚数が識別ポイントのひとつだが、ハヤブサ科は写真の通りほとんど分離しない。いかにもスピードの出そうな翼だ。の下には特徴的な髭状斑があり、黄色いアイリングが目立つ。
この日ミサゴの撮影ポイントに行ってみたらミサゴはおらず、またハヤブサがいた。おそらく前回と同じ個体だが、今回は単にカラスの群れからモビング(擬似攻撃)を受けて情けなく逃げていた。スピードを誇るハヤブサと言えども、こうして水平飛行している時の速さは大した事がなく、どうにかカラスを振り切れる程度でしかない。だがひとたび上空に舞い上がると位置エネルギーを利用して加速し、猛スピードで獲物にアタックしてノックアウトしてしまう。いったんノックアウトしてから改めて掴み掛るという狩りの方法が、直接掴み掛るタカ科と異なる。以前にも触れた様にハヤブサが狩りをする時の急降下速度の記録は時速数百kmと言われる(フォトギャラリー第11回参照)。鳥類最速というよりも生物界最速の可能性もある。カラスがタカやハヤブサに対してモビングするのは、上空から襲われない様に上昇を阻止し制空権を確保するためとされる。勿論、単独で迂闊に近寄れる相手ではない。特にハヤブサやオオタカなどは鳥類も捕食の対象だから、カラスのモビングは集団で行われる。うっかり単独でオオタカを深追いしたカラスが逆襲されて退散するところを見た事もある。カラスも生き残るために必死なのだ。
動物園などと違って、自然界の野鳥は常に同じ場所に居るとは限らない。いつでも見られる鳥籠の鳥よりも、会えるかどうかも分からない自然界の野鳥の方が、会えた時の感動が遥かに大きい。それが希少な鳥なら尚更で、ファインダーに捉えた時のドキドキ感は野鳥園などのケージでは味わう事が出来ない。幸いこの撮影ポイントに来さえすれば何かが居てくれる。山地と違い河川敷は遮る物が少ないので、野鳥を発見しやすい傾向もある。しかし、だからと言っていささかも感動が薄れる事はない。ハヤブサは絶滅危惧Ⅱ類。ここに居る事自体が不思議なのだ。当り前の様に感じてしまうのは錯覚だ。
分類:タカ目 ハヤブサ科
全長:雄42.0cm 雌49.0cm
翼開長:84.0cm~120.0cm
分布:全国で留鳥または漂鳥。
生息環境:海岸、河川、農耕地など。
食性:鳥類など。
レッドリスト:
絶滅危惧Ⅱ類(VU)
フォトギャラリー:第35回参照
撮影難易度:★★★★☆
ハヤブサ
Peregrine Falcon
Falco peregrinus
撮影日:2009年12月2日
撮影時間:12時49分35秒
シャッタースピード:1/2000秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ハヤブサ
第36回 2009年12月20日