この日はどこへ探鳥に出掛けるか決められず家を出てから歩きながら足の向く方へ進んだ。特定の野鳥を狙っていた訳ではなく通い慣れた道を普段通り歩いていた。概ね居そうな野鳥はイメージ出来ているのでチラッと見えただけで大体の野鳥はすぐに何か判るがこの時は違った。黒っぽい小鳥が暗がりの枝に止まったので咄嗟に撮影した。ファインダー像を見てもピンと来ない。暗くてなかなかピントが来ずしっかり撮れないまま一旦終ってしまった。モニターで画像を見ても案の定ピン甘ブレブレ(1枚目)。だからと言う訳ではないがサンショウクイっぽいと気付くまでだいぶ時間が掛かった。当然「ん?真冬にサンショウクイ?」という疑念が湧いた。サンショウクイは夏鳥のはずだしこの個体は背面が黒っぽく記憶の中のサンショウクイとは違うと感じた。違和感を覚えたらきちんと撮っておくというのはこの分野では鉄則だ。しばらく待っていると再びその姿が見えた。今度はピントが来たが空抜けで補正せず撮ったのでアンダーになってしまった(2枚目)。このあと死角ぎりぎりの枝に止まったのが垣間見え数歩動けば見えそうだったが我慢して動かず待ってみた。こういう場合下手に動くと裏目に出ることが多いから僕はじっと動かず待つタイプだがこの時はそれっきりに終ってしまった。一応サンショウクイと考えたが違和感が有り大阪でも目撃例の有る亜種リュウキュウサンショウクイではないかと思った。しかし実物は見たことが無いので自信が持てず、夏鳥も稀にはイレギュラーで越冬するケースが有るので亜種サンショウクイの可能性も有るかなと思いつつ帰宅後図鑑で確認作業をした。キャプションにも書いた通りリュウキュウサンショウクイは南西諸島のほか中国、四国、九州で留鳥なので冬季に大阪に居る可能性は夏鳥の亜種サンショウクイよりは高い。大阪は地理的に中国地方や四国からそう遠くない。リュウキュウサンショウクイの分布域が北上しつつあるのかも知れない。アンダーになってしまった2枚目はパソコンで明度を事後補正した。図鑑によればリュウキュウサンショウクイは体上面が暗青黒色、体下面が灰褐色で亜種サンショウクイと比べてから眉斑の白色部が狭い。今回同定の決定打となったのは額の白色部が狭い事と体下面が灰褐色である事。亜種サンショウクイは額の白色部が広く眉斑と混然一体となっているうえ体下面が白い。
リュウキュウサンショウクイはサンショウクイの1亜種という位置付けだが交雑例が無い事から別種とする説も有る様だ。カモ科を除き野鳥の異種間には不稔性(※)が有り仮に交配しても子は生まれない。しかし亜種間には不稔性は無く子が出来てもおかしくない。その交雑個体が無いという事は不稔性が有るはずだから亜種ではなく異種(独立種)だという考え方だ(フォトギャラリー第88回参照)。
なおサンショウクイは絶滅危惧Ⅱ類(VU)だがレッドリストに載っているのは何故か亜種サンショウクイ(Pericrocotus divaricatus divaricatus)だけだ。

(※)不稔性:繁殖能力が無いこと。

サンショウクイ:フォトギャラリー第477回他参照
類似種の識別:サンショウクイとリュウキュウサンショウクイ参照
初歩のバードウォッチング:季節移動参照
分類:スズメ目 サンショウクイ科
全長:20.0cm
翼開長:28.0cm
分布:南西諸島、中国、四国、九州で留鳥。
生息環境:平地~山地の広葉樹林など。
食性:昆虫など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★☆
リュウキュウサンショウクイ(雄)
Ryukyu Minivet
Pericrocotus divaricatus tegimae
撮影日:2020年2月1日
撮影時間:08時09分35秒
シャッタースピード:1/1000秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2020年2月1日
撮影時間:08時03分19秒
シャッタースピード:1/125秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
リュウキュウサンショウクイ
第531回 2020年2月10日