去年の暮、鳥取県の米子水鳥公園を訪れてみた。当初は一日の日程だったが、日本海ならではの野鳥たちに魅せられ、予定を変更して二日間通う事にした。今回はその顛末を紹介する。
ここは大阪南港野鳥園と同じく人工的に作られた野鳥公園で、野鳥に対する餌付けなどは行われず、水鳥の生息環境を整備する事に主眼が置かれている。大阪南港野鳥園が海水域と淡水域に分けられ、海水域が潮の干満の有る干潟であるのに対し、ここは全て淡水の池であり海とは分け隔てられている。そもそも日本海の干満差はわずか20~30センチしか無く、自然界にも干潟が少ないのだそうだ。
オジロワシとは全く予期せぬ出会いだったが、あまりにも遠方でこの様な画になってしまった。本来なら公表出来ない酷い写真だが、次いつ会えるかも分からないので敢えて掲載する事にした。土手の上にいる所を小学生くらいの子供が見付けて教えてくれたが、どうやって発見出来たのか不思議なくらい分かりにくい所でじっとしていた。このあと土手の反対側に降りてしまい、飛翔する事もなく吹雪の中に掻き消えてしまったので、まともな写真は遂に撮れなかった。オジロワシはトビと食性が似ていて、魚類などの屍肉を食べるスカベンジャーだがハンティングもする。ここでは体格の大きさを生かして、主にオオタカが狩った獲物を横取りするそうだ。何しろ翼を広げると2メートルを超える超大型の鳥だ。しかしトビと違い個体数は少なく、絶滅危惧ⅠB類、天然記念物に指定されている。しかも南方へ行くほど数は更に少なく、主に北海道や日本海側に生息するので、よほど狙って行かないと撮影は困難だ。ちなみにワシもタカもタカ科であり、分類上の違いは無い。
チュウヒも絶滅危惧ⅠB類に指定されているが、僕が公園に着いて観察窓から外を見るなり目の前をいきなり飛翔してくれたのには驚いた。朝と夕方に飛ぶ事が多いとされるが、ここでは昼間にも普通に飛ぶそうだ。草原などの上空の低い所を停空飛翔しながら獲物を探す。体重がオオタカの半分くらいしか無い軽量を誇り、停空飛翔に適している上に葦原の中に舞い降りても垂直に飛び上がる事が出来るとされる。羽色は個体変異が激しい。年が明けて正月2日には大阪南港野鳥園でも撮影出来たので、撮影難易度は星4個にとどめた。
ハイイロチュウヒはレッドリストには載っていないが、滅多に見られないし雄はかなり珍しく、野鳥ファンの間では雄を撮影出来るとちょっとした自慢になる。去年の正月に雌を撮影し、大晦日に雄を撮影する事になるとは予想もしなかった(フォトギャラリー第37回参照)。野鳥観察二日目のこの日、米子市は観測史上最大となる積雪を記録する猛吹雪に見舞われた。しかしその悪天候の中を、このハイイロチュウヒが飛んでくれた。雄は文字通り灰色のタカで、最初は吹雪の中で間近を飛んだもののシルエットしか撮影出来なかったが、僅かに小降りになった所を遠方ながら再び飛んでくれて何とか撮影出来た。濡れた窓ガラス越しでどうしようも無いピンボケだが、少ないチャンスだったのでとりあえずは満足だ。
この他、僅か二日間でオオタカ、ミサゴ、トビが現れ、猛禽類が6種も撮影出来た。島根県の安来市ではハヤブサも現れ、日本海の凄さを実感した二日間だった。
分類:タカ目 タカ科
全長:雄43.0cm 雌53.5cm
翼開長:98.5cm~123.5cm
分布:全国で冬鳥。
生息環境:草原、農耕地、河川など。
食性:両生類、鳥類、小型哺乳類など。
フォトギャラリー:第37回参照
撮影難易度:★★★★☆
ハイイロチュウヒ(雄)
Hen Harrier
Circus cyaneus
撮影日:2010年12月31日
撮影時間:15時14分58秒
シャッタースピード:1/60秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:800
撮影地:鳥取県
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:タカ目 タカ科
全長:52.0cm
翼開長:113.0cm~137.0cm
分布:全国で冬鳥。
生息環境:草原、農耕地など。
食性:小型哺乳類、両生類、鳥類など。
レッドリスト:
絶滅危惧ⅠB類(EN)
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★☆
チュウヒ
Eastern Marsh Harrier
Circus spilonotus
撮影日:2010年12月30日
撮影時間:13時08分53秒
シャッタースピード:1/100秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:400
撮影地:鳥取県
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:タカ目 タカ科
全長:雄80.0cm 雌95.0cm
翼開長:180.0~230.0cm
分布:本州以北で冬鳥または留鳥。
生息環境:海岸、河川、湖沼など。
食性:魚類、両生類、哺乳類などの主に屍肉。
レッドリスト:
絶滅危惧ⅠB類(EN)
指定:
天然記念物
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★★
オジロワシ
White-tailed Eagle
Haliaeetus albicilla
撮影日:2010年12月30日
撮影時間:14時15分07秒
シャッタースピード:1/50秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:400
撮影地:鳥取県
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
オジロワシ チュウヒ ハイイロチュウヒ
第57回 2011年1月5日