ついでに一眼レフカメラの基本構造を図示しておくとファインダーを覗いている状態が上の左図で、レンズを通して入った光はミラーで上へ反射しファインダースクリーンに投影される。この時点で撮像素子に投影されるはずの画像と同じの状態だ(撮像素子までの光路の長さが同じなのでここで合焦していれば撮像素子面でも合焦するはずだ)。但し撮像素子では上下左右が反転するがカメラを構えた体勢でファインダースクリーンを上から覗いたとしたら上下は正立像で左右だけが反転している。だから更にペンタプリズム(またはペンタミラー)のダハ面※で左右だけを反転させてファインダーへ導いている。つまりファインダー像は撮像素子に投影される画像と同じで上下左右の向きは被写体と同じという理屈だ。次にシャッターボタンを押すと右の図の様にミラーが跳ね上げられてファインダースクリーンへの光路は遮られブラックアウトする。光はそのまま直進し開いたシャッターを通過して撮像素子に至る。
※ダハ面:正面から見て左右の面が互いに直角になっている反射面。左面に当たった光束は右面へ、右面に当たった光束は左面へ反射し左右が入れ替わる。上図ではミラーから上へ向かった光束がペンタプリズム内で初めに反射する面。ここで左右が入れ替わり同時に次の反射面(上図では左下)へ向かう。このプリズムは正確にはペンタゴナルダハプリズムと言う。
参考文献:小倉敏布「写真レンズの基礎と発展」朝日ソノラマ社1998年
      金野剛志「カメラメカニズム教室(上)」朝日ソノラマ社1996年
一眼レフカメラ本体の構造上レンズの最後端とシャッター幕との間にミラーボックスというスペースが必要でそのぶんレンジファインダー機では不要だった一定以上のバックフォーカスが要求された(バックフォーカスが足りないとレンズがミラーの跳ね上げに干渉してしまう)。しかもバックフォーカスは焦点距離の短い広角系、そして大口径になるほど短くなる傾向が有る。この長さを確保する為にニッコールレンズでは最後尾(図では右端)の凸レンズを2枚に分けた。
一眼レフカメラの断面
しかし一眼レフにもレンズ設計上の制約が有る。それがバックフォーカスだ。バックフォーカスとはレンズの最後面の頂点から後側焦点(F’)までの長さ(S’)だ。よく混同されるフランジバックはマウント面から撮像素子までの長さだからバックフォーカスとは異なる(僕も混同していた)。
上図を解説しておくとS’ がバックフォーカス。上下の図を並べている意味は同じ大きさの像を結像するレンズであればレンズの構成が違っても焦点距離が等しい事を単純化したものだ。上のレンズの焦点距離は下の理論上の薄い単レンズの焦点距離と同じ長さだ。焦点F’から焦点距離 ぶん戻った位置を主点と呼びH’で表す。像側だけでなく物体側にも焦点Fと主点Hが存在する。レンズの逆側から平行光線を入れた時に位置が定まる。Hは前側主点(第1主点)でH’は後側主点(第2主点)と言う(この後側主点H’が後述する望遠レンズや広角レンズで更に重要になって来る)。従って実際のレンズの焦点距離は後側主点から像側焦点までの長さを指す。焦点距離は前も後ろも同じ になる。Fを前側焦点、F’を像側焦点と言う(前側焦点Fは物体の位置の事ではない)。
バックフォーカス(S’
アオバト マヒワ ルリビタキ 一眼レフ用標準レンズ
いよいよ現代の標準レンズの登場だ。これはニコン一眼レフカメラのレンズだがキヤノンなど他社のレンズも概ねガウス型だ。ひと目見ただけで前回連載企画のズミクロンの流れを汲んでいる事が分かる。前回までの連載企画を通しで読み進んだ人には何故この単レンズの配置になっているのか概ね理解出来ると思う。ただ前回までのレンズはレンジファインダー機というカメラのレンズだったのに対し今回は一眼レフのレンズという点が微妙に異なる。レンジファインダー機は長くカメラの歴史を彩って来たが撮影用のレンズとは別にファインダー用の光学系が有りパララックス(視差)という問題を抱えていた。パララックスとはファインダー像と実際の撮影像との間に視点の違いによるズレが生じる事だ(一眼レフでも廉価版の機種では価格を抑える為にファインダー倍率が100%未満のものも有るがそれは周辺部の見えない範囲まで写り込むという事であってファインダーで見えていた物が写らないという事ではない)。一眼レフの最も優れた点の一つは撮影用レンズがファインダー用を兼ねているという事だろう。交換レンズが広角系や望遠系などどう変わろうとファインダーで見たままが撮影される。レンジファインダー機の問題点であるパララックスも無い。このメリットや汎用性の高さなどから一眼レフが急速に普及した。因みに最近のコンパクトデジカメやミラーレスカメラは撮影用レンズを通った画像をカメラ本体の背面モニターや電子ファインダーなどに表示しているのでパララックスは無い。
ニッコール50mmF1.4
連載企画;一眼レフ用標準レンズ
街中に用事が有ったついでに都市公園へ行ってみた。水場で野鳥ファンたちに混ざってじっと立っていると野鳥たちが至近距離にいっぱい集まって来た。やはり山の野鳥とは違う。人馴れしていて警戒心が希薄だから小枝さえ被らなければ割と撮りやすい。初心者の人の手軽な入口は都市公園だろう。初めのうちはシジュウカラなどのカラ類を喜んで撮っていたがマヒワやアトリなどの群れが割って入って来た。だがマヒワは人馴れしていないみたいで短時間水を飲んではすぐに飛び去るという行動を長いスパンで繰り返していた。
そんな中異常に警戒心の希薄なルリビタキが目の前に現れた。野鳥ファンたちの至近距離の枝にじっと止まったまま10分以上もじっとしていた。初めのうちはみんな夢中になって連写していたがだんだん馬鹿らしくなって来て誰もシャッターを切らなくなった。明らかに誰かに餌付けされている個体だ。本来は藪の中を好む習性で撮影難度は決して低くないはずだ。誰でも撮れる状態ではベテランほど面白くないだろう。
そのあと誰かが木の高い所にアオバトの群れが止まっているのに気付いた。自宅近くで見なくなったと思っていたらこんな所に居た。冬季は低地に移動しているらしい(と言ってももう春だが)。雌雄十数羽の群れだったが高くて枝も被り厳しい撮影条件だった。そう言えば空の高い所をそれらしいハトが飛んでいるのが木々の間に垣間見えていたがまさか頭上に群れがいるとは思わなかった。こちらも撮り始めて短時間で飛び去ってしまった。都市公園だからと言って全ての野鳥が人馴れしている訳ではない。

シジュウカラ:フォトギャラリー第613回他参照
アトリ:フォトギャラリー第624回他参照
YouTube動画:ルリビタキ参照
分類:スズメ目 ヒタキ科
全長:14.0cm
翼開長:22.0cm
分布:全国で漂鳥。
生息環境:平地~山地の林など。
食性:昆虫、木の実など。
フォトギャラリー:第623回他参照
撮影難易度:★★☆☆☆
ルリビタキ(雄)
Red-flanked Bluetail
Tarsiger cyanurus
撮影日:2021年3月3日
撮影時間:13時12分27秒
シャッタースピード:1/1000秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2021年3月3日
撮影時間:13時12分17秒
シャッタースピード:1/1000秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:スズメ目 アトリ科
全長:12.0cm
翼開長:21.0cm
分布:全国で冬鳥または漂鳥。
生息環境:平地~山地の草原、林など。
食性:種子など。
フォトギャラリー:第603回他参照
撮影難易度:★★☆☆☆
マヒワ(上=雄、下=雌タイプ)
Eurasian Siskin
Carduelis spinus
撮影日:2021年3月3日
撮影時間:13時34分36秒
シャッタースピード:1/320秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2021年3月3日
撮影時間:13時08分44秒
シャッタースピード:1/2500秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:ハト目 ハト科
全長:33.0cm
翼開長:55.0cm
分布:九州以北で留鳥または漂鳥。
生息環境:平地~山地の森林、海岸など。
食性:木の実、種子など。
フォトギャラリー:第561回他参照
撮影難易度:★★★☆☆
アオバト(雌)
White-bellied Green Pigeon
Treron sieboldii
撮影日:2021年3月3日
撮影時間:13時55分57秒
シャッタースピード:1/2500秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
第628回 2021年3月14日