大都会大阪の近郊に驚くべき野鳥が姿を現した。レッドリストではタンチョウと同格、オオタカより稀少な絶滅危惧Ⅱ類に指定されているサシバだ。約10年前のレッドリストではオオタカが絶滅危惧Ⅱ類でサシバは無指定だった。水田の減少とともに餌となるカエルが減り、日本への飛来数が激減したと言われている。この個体は尾にダメージを受けているが、特に支障は無いようだ。トカゲらしき獲物を掴んだまま上空を旋回し、滑翔しながら2分ほどで視界から飛び去った。
飛翔時のタカ科の主な見分け方は、大きさ、色、模様などの他に、翼の先端の長い羽根(初列風切)の枚数がポイントになる。まず最もよく見かけるトビを消去法で外すが、トビは尾の形に特徴があり、他のタカ科が扇型やバチ型であるのに対し燕尾型にくびれている。次に大きさだが、飛翔中は比較するものがないので、概ねハシボソガラス大というように見分けるしかない。色と模様は翼や尾の横斑、胸や腹の横斑や縦斑、上面の色、眉斑などだが、遠目には判別が難しい。分かり易いのは初列風切の長い羽根の枚数で、サシバは5枚だ。そして喉が白く縦線が入っているなどの特徴を総合判断してサシバと同定出来る訳だ。
それにしてもタカのオンパレードだ。あまりにも当り前のように希少な野鳥が飛んでいるので実感が伴わないが、長年リゾート地で仕事をして来て過去に遭遇した絶滅危惧Ⅱ類は北海道のクマゲラのみだった。撮影は今回が初めての快挙だ。この日は運も良かった。ここ十日ほどタカ科の姿が見えなかったので心配していたが、新顔の突然の来訪に驚いた。しかもここまで寄る事は超望遠といえども滅多にない。レッドリストに載っている野鳥のほとんどは離島や辺境地など限られた地域に生息するので、大阪には縁遠いものというイメージがある。しかしこのエリアの生態系はそういったイメージを覆すレベルのものだ。大阪の人々、いや地元の住人さえ、その価値を理解していないのではないか。多くの野鳥は音に対して敏感だが、昼頃に鳴る意味不明のサイレンや工事の無神経な騒音など、何とかならないものだろうか。ただでさえ飛行機やヘリコプターで多くの野鳥が要らぬ緊張を強いられているのだ。そんな大都市近郊にサシバが飛来したのは奇跡としか思えない。この事実を軽視して現状を放置するなら、早晩取り返しのつかない事態を招くだろう。
分類:タカ目 タカ科
全長:雄47.0cm 雌51.0cm
翼開長:105.0~115.0cm
分布:青森~九州で夏鳥。
生息環境:森林、農耕地。
食性:爬虫類、両生類、鳥類、昆虫など。
レッドリスト:(VU)
フォトギャラリー:初登場
サシバ
撮影日:2009年5月2日
撮影時間:13時45分06秒
シャッタースピード:1/2000秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
Grey-faced Buzzard
Butastur indicus
撮影日:2009年5月2日
撮影時間:13時45分04秒
シャッタースピード:1/2000秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
サシバ
第5回 2009年5月3日