過去何度か行き違いになっていたヘラサギにやっと会えた。ネットで情報が入手出来る現代においては便利な反面、事前に目当ての野鳥が居るのが分かっていても現場に行ってみると抜けた後だったり、諦めて帰った後にその野鳥が再び現れたりするという事まで分かってしまう。僕にとってはヘラサギが正にそういう野鳥だった。ヘラサギは過去にも米子水鳥公園に飛来していた様だが、僕が冬季休暇に入った時には居なくなっていた。だが今シーズンは違った。
この日、昼近くになっても姿の見えないヘラサギを「今年も駄目かな・・・?」と自嘲気味に観察所から探していると園内の遥か遠方、カモ類がたむろする一角にたたずむ白いシルエットが見えた。かなり遠方の小さな立ち姿で、嘴を左右に振る独特の採餌行動は確認出来なかったが、じっと立っているだけでも嘴を確認するまでも無くサギ類とは明らかに違う只ならぬオーラはすぐにそれと分かった。遠すぎて絵にならず、ここに居ても仕方が無いと判断した僕は迷わずカメラを担いで、もっと近いポイントに移動した。だがそこからも思ったより距離が有って、思う様な写真が撮れない。しばらくすると観察所の方へ向って飛んでしまった。再びカメラを担いで移動すると道路脇の植込みの隙間から間近に見える場所が有った。幸いこちらの姿が隠れてほとんど警戒されずに撮影出来た。逆光だが白いヘラサギなので却ってディテールが白飛びせずに表現出来た。
ヘラサギは、この4日前に撮影したアカツクシガモと同じくレッドリストで「情報不足」に分類されている稀少種だ(フォトギャラリー第126回参照)。クロツラヘラサギとの識別点は、ヘラサギの方がやや大型なのと眼と嘴の間に白っぽい部分が有る事などだ。クロツラヘラサギは眼先に黄色の小斑が出る場合も有るが、鉄仮面と言われる通り眼がどこに有るのか分からないほど顔が黒く裸出している。
ところでコウノトリ目における各科相互の違いは他の目における各目相互の違いくらいの違いが有ると言われる。つまりコウノトリ目のサギ科、コウノトリ科、トキ科のそれぞれが「科」ではなく「目」だったとしてもおかしくないという訳だ。
なお、この個体は飛翔時に初列風切に黒色が見えた事から若鳥と思われる。ヘラサギ情報が無くても今年も例年通り米子水鳥公園へ行くつもりだったから、この出会いは率直に嬉しい。しかし、僕にとってはこの出会いはもう過去の出来事になってしまった。そう考えると一抹の寂しさが無くも無い。そしてまた次の出会いを求めて僕の放浪とも言うべき旅路は果てしなく続く・・・
クロツラヘラサギ:フォトギャラリー第99回参照
類似種の識別:クロツラヘラサギとヘラサギ参照
分類:コウノトリ目 トキ科
全長:86.0cm
翼開長:123.0cm
分布:全国で稀な冬鳥または旅鳥。
生息環境:干潟、水田、河川、湖沼など。
食性:魚類、両生類、甲殻類など。
レッドリスト:(DD)
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★☆
ヘラサギ
Eurasian Spoonbill
Platalaea leucorodia
撮影日:2014年1月5日
撮影時間:11時42分33秒
シャッタースピード:1/250秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:200
撮影地:鳥取県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ヘラサギ
第128回 2014年1月21日