逆光ならば真っ黒に黒ツブレしてしまうほど黒い怪鳥というイメージのイヌワシ。+1.0補正で撮影し、画像処理ソフトで更に明度を補正したが、やはり黒い。どうにか後頸の金茶色が見える。
日本で一番近距離でイヌワシが撮影出来ると言われる伊吹山にまた行って来た。今回は定位置の止まり姿は敢えて狙わずに、以前地元の人に教えてもらった撮影ポイントでカメラを据えて飛び姿を狙っていると、目の前に2羽のイヌワシが現れ、見る見るこちらに向って来た。300mmレンズからはみ出すくらい至近距離に寄って来たが、その前後のコマがこれだ。トリミングでバランスを取っているものの、換算450mmレンズで翼開長が約2メートルのイヌワシが画面一杯になるという事は概算で距離が約40メートルくらいだろうか。このポイントには同様に黒っぽいトビが多く、曇天で暗い空の下、意外に似ているトビに惑わされながらの撮影となった。イヌワシもトビも飛翔スタイルが似ていて、上昇気流に乗って山裾をゆっくりとソアリングするが、イヌワシは1日に1度飛べば良い方だ。翼先の分離羽はトビが6枚、イヌワシが6枚か7枚で、この個体は7枚有る様だ。トビの翼下面の初列風切羽の基部には白斑が有るが、イヌワシも風切羽の基部は灰色味を帯び、風切羽の一部に不明瞭な鷹斑が見える。勿論イヌワシの方がひと回り大きいが、目測では大きさの違いは分かりにくい。決定的な違いは尾羽の形で、トビは尾羽が日本のタカ科で唯一凹型またはバチ型だが瞬間的に扇型に見える事もあるので、後から画像を確認するまで確証の無いままシャッターを切っていた。実際この時たまたま同じポイントに居た人はトビと思い込んでシャッターを切っていなかった。
なお、このポイントは山の稜線に沿った道路沿いにあるが、イヌワシが稜線のどちら側に現れるかを予測する時は、風向きに注目すると良い。風が山に当たって上昇気流を生じる側、すなわち自分から見て向かい風になる側にカメラを向けておくとイヌワシが現れる確率が高い様だ。
実はこの時僕はカメラを2台構えていた。1台はサブカメラのD40に500mm+テレコンを装着して三脚に固定し、もう1台はD5100に55-300mmズームを装着して首からぶら下げて手持ち撮影の態勢で臨んだ。とっさに近距離に現れた野鳥に対応する時は300mmで押さえ、遠方の被写体は1000mmでじっくり狙う両面作戦だった。今回の写真は300mmが活躍した訳だ。ここまで寄って来たのなら今思えばズームアウトすれば良かったのだけど、それは後からそう思うだけで、撮影の瞬間はとっさの事に頭が回らなかった。警戒心の強いイヌワシがここまで不敵に寄って来るとは予想していなかった結果だが、それなりに迫力映像になったのは、さすがイヌワシだ。

トビ:フォトギャラリー第21回参照
類似種の識別:イヌワシとトビ参照
初歩のバードウォッチング:生息環境参照
分類:タカ目 タカ科
全長:84.0cm
翼開長:167.5~213.0cm
分布:局地的に留鳥。
生息環境:低山から亜高山帯の岩場、林など。
食性:哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類など。
レッドリスト
絶滅危惧ⅠB類(EN)
指定:
天然記念物
フォトギャラリー:第85回参照
撮影難易度:★★★★☆
イヌワシ
Golden Eagle
Aquila chrysaetos
撮影日:2012年10月16日
撮影時間:15時29分29秒
シャッタースピード:1/1250秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:滋賀県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2012年10月16日
撮影時間:15時29分26秒
シャッタースピード:1/1000秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:滋賀県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
イヌワシ
第92回 2012年10月23日