ここ数回、錚々たる野鳥たちを紹介して来た反動で今回は地味に思える。しかしシギ科などと並んで水辺の主役、チドリ科の4種だ。
シギ科の嘴が千差万別なのに対し、チドリ科の場合はご覧の通りほぼ不変だ。逆に羽色はチドリ科の方がバリエーションに富んでいると感じる。
ケリは飛翔中の方が特徴をつかみ易い。畑の真ん中に何かがうごめいていたので撮影してみたら冬羽のケリだったという事もある。だが今回は夏羽で、干潟に飛来し正面から胸の紋様を捉える事が出来たので、すぐにケリと分かった。小さいチドリ科のイメージとは裏腹にキジバトより少し大きく、日本のチドリ科の中では最大級だ。
ムナグロは保護色で、人に教えてもらってもなかなか見つからず、ようやく撮影出来るまでに数分掛かった。ほとんど動かずに干潟でじっとしていた。夏羽も冬羽も近縁のダイゼンとよく似ているが、上面の黄褐色の斑模様はムナグロの特徴だ。夏羽は胸だけでなく顔から腹まで黒い。見つけるのも見分けるのも難しいので撮影難易度は星4個に近い3個だ。最近ダイゼンも撮影出来たが、これも自分で同定した訳ではなく、僕の様な素人には発見さえ不可能に近いくらい遠方に居るところを野鳥園の人が見付けて教えてくれた。
コチドリは小さいうえに動きが速く、なかなか撮影に手間取った。千鳥足という言葉から連想される歩き方とは異なり、素早く走っては止まる。ケリとは逆に日本のチドリ科の中で最小で、全長はモズより小さい。イカルチドリと似ているが黄色いアイリングが明瞭で、首輪が太いなどの違いがある。9月には近縁のハジロコチドリも撮影出来たが、残念ながらシャッターチャンスに恵まれず証拠写真レベルにも達していないので掲載は見合わせた。
イカルチドリは日本のチドリ科の中で数少ない留鳥とされる。こうして川の浅瀬でじっとしている事が多いらしく、石ころに紛れて目立たない。まともにカメラ目線で少々こちらを警戒中だから、僕も身動きが取れず指だけ動かしてシャッターボタンを押した。だが人通りの絶えない堤防沿いだから人間に慣れている様で、さほど撮影は難しくなかった。
チドリ科の雄は巣が襲われそうになると、わざと傷ついたふりをして天敵の気を引いて巣を守る擬傷という行為が知られている。またチドリ科は昆虫などを捕食する肉食性だが、植物質も摂るとされる。しかしチドリ科のほとんどは渡鳥なので日本に居ない時季の事が分からず、一年を通してほぼ日本全国に留まるイカルチドリは、チドリ科の詳しい生態を知るのに重宝なのだそうだ。
ところでイカルチドリを撮影した川にはカワセミなども居た。普通カワセミは護岸された川には巣が作れないから住めない。この辺りは川の両側とも護岸された堤防だが、砂礫が堆積した中洲があり、さながらサンクチュアリーの様になっている。出来れば重機で浚渫などせず、このまま手入れの行き届かない状態で放置しておいて欲しいのだが駄目だろうか。

類似種の識別:イカルチドリとコチドリコチドリとハジロコチドリ参照
分類:チドリ目 チドリ科
全長:21.0cm
翼開長:45.0cm
分布:九州以北で留鳥または漂鳥。
生息環境:河川、水田など。
食性:昆虫など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
イカルチドリ
Long-billed Plover
Charadrius placidus
撮影日:2009年10月20日
撮影時間:12時56分59秒
シャッタースピード:1/1000秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:チドリ目 チドリ科
全長:16.0cm
翼開長:42.0~48.0cm
分布:九州以北で夏鳥。
生息環境:河川、水田、干潟など。
食性:ゴカイ、貝、蟹など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
コチドリ
Little Ringed Plover
Charadrius dubius
撮影日:2010年7月8日
撮影時間:10時28分49秒
シャッタースピード:1/400秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:400
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:チドリ目 チドリ科
全長:24.0cm
翼開長:50.0cm
分布:全国で旅鳥。
生息環境:河川、干潟、農耕地など。
食性:昆虫、甲殻類、貝類、ミミズなど。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
ムナグロ
Pacific Golden Plover
Pluvialis fulva
撮影日:2010年5月2日
撮影時間:15時55分24秒
シャッタースピード:1/400秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:チドリ目 チドリ科
全長:36.0cm
翼開長:75.0cm
分布:中部・近畿で留鳥。その他地方で夏鳥または冬鳥。
生息環境:河川、水田など。
食性:昆虫など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
ケリ
Grey-headed Lapwing
Vanellus cinereus
撮影日:2010年6月1日
撮影時間:15時13分04秒
シャッタースピード:1/200秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ケリ ムナグロ コチドリ イカルチドリ
第54回 2010年10月20日