前々回コシアカツバメが撮れていなかったので再度同じポイントへ行ってみたら近くの集落の電線にコシアカツバメと亜種ツバメの群れが仲良く並んで止まっていた。フォトギャラリーではお馴染みの野鳥だ。この個体は尾が短く見えるので雌または幼鳥と思われる(尾の長さは雄成鳥>雌成鳥>幼鳥の順)。このポイントへ行ったのは実はアカハラツバメが本命だったが残念ながらその姿は見えなかった。コシアカツバメと亜種ツバメは日本で繁殖するがアカハラツバメは通常ユーラシア大陸で繁殖するとされ日本では主に旅鳥だ。しかし日本でも稀に繁殖するとされ亜種ツバメと交配しているのか中間的な形質の個体も多い。その為か亜種の分類も実は不明瞭なんだとか。だいぶ前に記述した事が有るが「クライン」という問題が絡んでいるのだろう(フォトギャラリー第88回参照)。それとは別に野鳥には同一の亜種であっても暗色型や淡色型などの型や個体差も有る。最近登場したホトトギスの赤色型もその一種だろう(フォトギャラリー第243回参照)。この様な例はハチクマ(暗色型・淡色型・中間型)やクロサギ(黒色型・白色型・中間型)などが知られている。また、後述するハシボソガラスの部分白化などの個体変異が出現したりする。これらは同じ親からタイプの異なる子が生まれた結果だから異なる亜種間の交配の結果としてのハイブリッドとは異なる。だが太古の昔から様々なDNAが代々受け継がれて来た結果であるという点では同じ事なのかも知れない。我々は複雑に絡まり合った血脈の結果を見ているに過ぎない。全てが分類可能な白か黒かで割り切れないのも自然界なのだろう。
そして例の部分白化のハシボソガラスが1ヶ月前と同じポイントで見られたので続報をお伝えする(フォトギャラリー第242回参照)。ここは前回から100mと変わらない水田地帯でこの1ヶ月間ほとんど移動していない事になる。スズメなど我々が留鳥と思っていても実際は個体が入れ替わっていて漂鳥である場合が有るが、この個体を通年観察する事が出来れば留鳥である事の裏付け材料になるはずだ。このあと9月9日と16日にも確認したが何故かいつも単独行動で群れと一緒に居る所は見ていない。なお野鳥などの白化は氷河期に白い個体が保護色で生き残った名残りでその遺伝情報がDNAに刻まれているから稀に出現するのだとか。将来また地球が氷河期に入ったらこの遺伝子が役に立つのだろう。だが氷河期でも極地でもないのにライチョウなどの様に換羽する訳でもなく一年を通して全身真っ白なダイサギやコサギなどが繁栄しているのは何故だろうか。実際生き残っているのが不思議なくらいフィールドでも彼らは非常に目立つ。人間が考える理屈通りなら彼らの全てが保護色であってもおかしくない。だが多くの野鳥たちがその理屈を全面否定する様なカラーリングだ。つくづく自然界は単純な図式では語れない。こんなに身近に有りながら謎だらけだ。
ツバメ:フォトギャラリー第247回他参照
アカハラツバメ:フォトギャラリー第247回他参照
ハチクマ:フォトギャラリー第24回他参照
クロサギ:フォトギャラリー第235回参照
ダイサギ:フォトギャラリー第23回参照
コサギ:フォトギャラリー第179回他参照
ライチョウ:フォトギャラリー第119回参照
初歩のバードウォッチング:季節移動参照
分類:スズメ目 カラス科
全長:50.0cm
翼開長:98.5cm
分布:九州以北で留鳥。
生息環境:市街地、農耕地、河川、林など。
食性:雑食性が強い。
フォトギャラリー:
第242回参照
撮影難易度:★☆☆☆☆
ハシボソガラス(部分白化個体と思われる)
Carrion Crow
Corvus corone
撮影日:2016年9月1日
撮影時間:06時33分58秒
シャッタースピード:1/640秒
絞り値:F5.6
撮影モード:プログラムAE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:スズメ目 ツバメ科
全長:19.0cm
翼開長:32.0cm
分布:九州以北で夏鳥。一部越冬。
生息環境:住宅地、農耕地、海岸など。
食性:昆虫。
フォトギャラリー:
第240回他参照
撮影難易度:★★☆☆☆
コシアカツバメ
Red-rumped Swallow
Hirundo daurica
撮影日:2016年9月9日
撮影時間:07時53分51秒
シャッタースピード:1/500秒
絞り値:F5.6
撮影モード:マニュアル
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:500
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
コシアカツバメ ハシボソガラス
第250回 2016年9月25日