この時季は幼鳥が多く同定に悩む事も多い。1枚目と2枚目は幼鳥、3枚目の写真は雄成鳥と思われる。幼鳥にはの辺りに縦斑が有る。2枚目の写真は低く垂れこめた暗雲の下だったので光線に恵まれず距離もそこそこ有ったのでこういう画質になってしまったのはやむを得ない。これでも何とかホオジロ幼鳥と識別可能だ。眉斑が無ければホオアカの様にも見えるが大阪では冬鳥と考えられているからその可能性は考えにくい。だが何しろ相手は野生の生き物だからどんなに低い可能性でもゼロという事は無い。話は横道にそれるがどの世界でもある程度経験値が高くなって来るとその経験が邪魔をしてしまいベテラン病という症状が出て来て未然に可能性を否定してしまう傾向に陥りがちだ。それはそれで効率化が出来ているという見方も出来るんだろうけどビギナーズラックの様な場外ホームランは得にくい。バードウォッチングの世界で言えば「ここには大した野鳥が居そうにない」とあらかじめ見切りをつけてしまう様なケースが考えられる。経験値の低いビギナーの頃はそんな勘が働かないから誰も予測していない様な結果を出す場合が有る。時には効率を度外視して目先を変えてみるのもいいかも知れない。
猛暑の続いた7月中旬、1羽のホオジロ成鳥が木陰で口を開けたままじっとしていた。暑さのあまりこうして体温調節しているものと思われる。この様な仕草はかつてミサゴなどで見た事が有る(フォトギャラリー第70回参照)。
野鳥たちは我々人間と同じく恒温動物で、暑ければ体温を下げ、寒ければ体温を上げようとする。人間の場合は暑ければ汗をかいて体温を下げ、寒ければ筋肉を震わせて体温を上げようとする。今回はこの誰でも当たり前だと信じて疑わない事実に疑問符を投げかけてみたい。例えば、健康な人の平熱を36℃としよう。体の部位にもよるが、皮膚の温度は概ね35℃位だろうか。ならば、気温が35℃の時その人は暑くもなく寒くもない筈だ。そして体温調節のためには何もしないでよい。そして例えば気温が上がると体温も上がろうとするので汗をかき気化熱を利用して35℃を保とうとする。気温が下がると体温も下がろうとするので筋肉を震わせて脂肪を燃焼させ、やはり35℃を保とうとする。まず35℃という気温は経験的に言うとかなり暑いという気がするが、それはさておく。問題は、「本当にそうなのか」という事だ。例えばかつて変温動物を使ったこんな実験があったという。まずカエルを1匹熱湯の中に投げ込む。当然カエルは驚いて逃げる。体温より熱い湯に入れられたからだ。次に同じくカエルを1匹、今度は普通の水の中に入れる。カエルは心地いいので逃げない。そしてそのまま次第に水温を上げていくとカエルは変温動物なので水温の変化と自分の体温の上昇に気付かず遂に熱湯になっても気付かないまま死んでしまうというのだ。さて、次にカエルの代わりに我々人間を使って同じ実験をしてみたとする。熱湯の中に投げ込まれた我々は当然逃げる。次に35℃のぬるま湯の中に我々を入れて次第に湯温を上げていったとする。例えば湯温が36℃に上がった時、いったい何を基準として我々は熱いと感じるのだろうか。我々が36℃の湯を熱いと感じるのは体温が35℃の時であって、体温が36℃に上がったらカエルの時と同様に我々は熱さを感じなくなる筈だ。そして、そのまま熱湯になっても気付かず死んでしまう事になる。ところがそうはならない。湯温が40℃を超えた辺りから我々は耐えられなくなり湯から出る。なぜだろう?カエルと人間とどこが違うと言うのだろうか。湯の中でいくら汗をかいても体温は下がらない。我々の体温は間違いなく湯と同じ温度まで上がっている筈だ。なのに我々は湯が熱いと感じるのだ。湯温が気温であっても理屈は同じであり気温が体温より低くても結果は同じだ。健康な人は徐々に上下する気温を感じ取る事が出来、しかも驚いた事に常に計った様に35℃を保つのだ。もし、暑いと感じるから体温を下げると言うのであれば我々の体温は際限なく下がり続ける事になる。例えば気温が36℃のとき体温が35℃以下に下がったとしても気温の方が高い事に変わりは無いので、なおも暑いと感じ更に体温を下げようとするはずだからだ。逆も同様だ。つまり、我々人間は体内に35℃を正確に計る絶対的な温度計を持っていて実際に体温がそれより上がり過ぎると下げようとし体温が下がり過ぎると上げようとするのだとしか思えない。だから体温は常に35℃を保ち、夏は暑く冬は寒いと感じるのだ。そうでなければ説明がつかない。そして野鳥たちも体温調節の方法は異なるが同じ理屈で体内温度計を持っているという事になる。なお哺乳類の中でも汗をかいて体温を下げる動物は少数派で、例えば犬などは舌を出して唾液の気化などにより体温を下げる(肺の血管からの放熱効果も有るかも知れない)。多くの野鳥たちもこの方法を採っているものと思われる。体に備わった機能の他に日陰に移動するとか水浴びをするなどの行動による方法も有るだろう。先日アオバズクの巣立ち雛が見せた翼を半開きにする仕草も方法の一つと思われる(フォトギャラリー第307回参照)。もちろん大多数の野鳥たちは季節移動という切り札を持っている(本来その目的は暑さ寒さを避ける為というよりは食料確保や繁殖の為なのだろうけど)。
画像が苦しい時はコラムで誤魔化すフォトギャラリー恒例の常套手段で体温調節の仕組みについて持論を展開してみた。
なお、全くどうでもいい事だけど今回のホオジロはフォトギャラリー第16回以来8年2ヶ月弱(2976日)ぶりのフォトギャラリー掲載で、先日8年1ヶ月半(2968日)ぶりの掲載(フォトギャラリー第14回から第305回)だったカワラヒワの「最も間の空いたフォトギャラリー掲載」記録を更新した(携帯電話待受画面サイズを除く)。当然だけどフォトギャラリー初期のコラムは野鳥ファンの端くれになって間もない時代ということもあり自分で読み返してみても稚拙だなぁと思う。しかし上達のプロセスがたどれるから(僕が上達しているとして)写真から入ったビギナー(※)の人には参考になる部分も有るのではないだろうかと勝手に思っている(ありがちなプロセスはまず手近な所から始め次に知名度の高い野鳥を狙って野鳥撮影スポットへ行き珍鳥を求めて次第に遠出をしてまた地元に戻るパターン)。同じプロセスを踏襲すれば少なくとも同じターゲットを狙う事は充分可能だろうから。

(※)写真から入ったビギナー:写真趣味から野鳥の撮影を始めた人という意味。カメラの扱いには慣れているから後は野鳥の事を知れば良い。野鳥は沢山ある被写体の一つでしかないという時代が長く続いたから僕はこのタイプに近い。

ホオアカ:フォトギャラリー第247回参照
初歩のバードウォッチング:色彩・斑紋季節移動参照
分類:スズメ目 ホオジロ科
全長:17.0cm
翼開長:24.0cm
分布:九州屋久島以北で留鳥または漂鳥。
生息環境:平地~山地の草原、農地など。
食性:昆虫、蜘蛛、草の種子。
フォトギャラリー:第16回参照
撮影難易度:★★☆☆☆
ホオジロ(上・中=幼鳥?、下=雄成鳥)
Meadow Bunting
Emberiza cioides
撮影日:2017年7月13日
撮影時間:14時30分35秒
シャッタースピード:1/1250秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2017年7月25日
撮影時間:08時54分58秒
シャッタースピード:1/160秒
絞り値:F5.6
撮影モード:プログラムAE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2017年7月27日
撮影時間:08時23分07秒
シャッタースピード:1/250秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
ホオジロ
第309回 2017年8月3日