今回2泊お世話になった島内の民宿。海鮮料理が美味しかった(目を奪われて写真を撮り忘れたのが心残り)。部屋数に限りがあり相部屋となったが同部屋になった人が同じ関西人で底抜けに明るい人だったので野鳥の話をしていると気が開けてすぐに打ち解けることが出来た。どの趣味でも同じだと思うが野鳥ファン同士はすぐに意気投合して仲良くなれる。実はここへ来る前日朝6時に目が覚めてしまい自宅を出る前に深夜ドライブに備えて昼間の内に仮眠を取っておこうと横になったものの興奮して一睡も出来ずに出発したので結局ここまで36時間以上眠っていない状態だった。翌朝は夜明け前に起床しようと思い早めに就寝した。
余録;民宿つかさ
舳倉島の西海岸に出た僕は通路から岩礁に目を凝らした。この海岸の難しいところは野鳥まで距離が有って見辛い事だが死角は多いものの広範囲に見通しが利くので見つけるのはさほど難しくない。すぐに明るいベージュ色の小鳥が目に止まった。珍鳥だからと言ってカラフルに珍鳥オーラを発しているとは限らない。地味だが非常に特徴的な色味に見えたので咄嗟に撮影した。しかし距離が有り過ぎて画質が悪く現場で識別するのは諦めて帰宅後パソコン画面で同定することにした。後日帰宅途中にある所でレンジャーにモニター画像を見てもらったら即座にヒメコウテンシとの同定。この画像で即答出来るとはさすがプロだと感心する。さて類似種との識別だがレンジャーによれば静止時ヒメコウテンシは三列風切が初列風切の上に被さる傾向が有り翼が短い。クビワコウテンシは逆に翼が長く尾が短く見える。コヒバリは三列風切より初列風切が突出するとの事。ヒバリは線がくっきり目立つ。確かに色の淡さが肉眼でもヒバリとは明確に違って見えた。だから撮影した訳でヒバリを見慣れていることが役に立った。普通種であっても普段から地道によく観察しておくとこういう時に生きて来る。ヒメコウテンシは舳倉島では少なくないがアマチュアはヒバリと思って気付かずに終っていることが多いそうだ。人間というものは経験則が邪魔をして自分が過去に見たものと似ているとそれに違いないと思い込む傾向が有るのだろう。僕も今回初めて見たと思っているが過去にそれと気付かないまま見ていた可能性は有る。地味で同定が難しい野鳥だがいつか見たいという憧れは有った。もしこの時点でそれと判っていたら三脚を立てレンズを超望遠に交換してでも撮影を続行していただろう。見慣れていれば肉眼でもそれと気付いていたところかも知れない。しかし今回強い印象が残ったのでもし次に同じ条件で見る機会が有ればきっと気付くはずだ。図鑑で見た知識と実物を見た印象とでは後者の方が遥かに身につくのだと思う。
同じ岩礁地帯にオジロビタキも居た(画像は松林に戻った所に居た別個体)。大阪でもニシオジロビタキは過去2度ほど見たことが有るがオジロビタキの方は初見だ。ニシオジロビタキは下嘴が淡黄褐色でオジロビタキは黒いが光線状態によってはどちらも黒く潰れてしまってよく見えなくなる。もっと分かりやすいところでは上尾筒がニシオジロビタキは灰色、オジロビタキは上の画像の通り黒い。雄ならば腮から喉の橙色が胸までぼんやりと広がって見えるのがニシオジロビタキでオジロビタキは胸が灰色でその境界がはっきりして見えるそうだ。現地で出会った人は舳倉島ではニシオジロビタキは見たことが無く全てオジロビタキの間違いだろうと言っていたがレンジャーによればそれは時季によるそうだ。ベテランの多い舳倉島では個人の見解が飛び交うから話は複数の人に確認した方が良い。なおオジロビタキは東日本、ニシオジロビタキは西日本で見られる傾向が有るらしいがニシオジロビタキの「ニシ」は西日本の「西」ではなく世界的な分布域がヨーロッパやアフリカなど一般的な世界地図の西方面に寄っているからだと思われる。
コルリは水場でよく出た。図鑑によれば雌は額や腰に青味が有るとされる。図鑑の記述に従えばコルリ1枚目の個体は雌の様に見える。しかしレンジャーによればこれは雄の若鳥との事で上尾筒の茶色い2枚目が雌という見立てだ。ここで気になるのがシマゴマとの識別で図鑑によればシマゴマは体下面に褐色の鱗状斑、不明瞭ながら眉斑が有り腰に青味が無く赤褐色味が有るとされ、その記述に従って僕は1枚目の個体がコルリ雌、2枚目の個体をシマゴマと思っていた。これをコルリ雌と言われてはこれまでシマゴマと思っていたものが全て崩れ去ってしまう様な気がする。
同じ水場に現れたエゾムシクイと思われるものはアムールムシクイと極似しておりここ舳倉島にはどちらが居てもおかしくないので鳴き声で識別するしかない。そんな訳でキャプションには(?)を付けた。ここへ来てコルリとエゾムシクイの撮影は失敗していて絞りの設定を間違ったままでスローシャッターになっているから画像がブレている。ここは絞りを開放してISO感度をもう1段上げておくべきだった。まあ普通種だったから良かった様なものだ。
初日の締めくくりはブッポウソウでグラウンドの奥の電線に止まっていた。個人的には3年前にこの付近で撮影して以来だ。半日余りの成果としては充実し過ぎとも言える初日だった。翌日は終日動ける日だからどんな事になるのかと思うとうきうきして寝る間も惜しい程だ。こうして舳倉島の濃過ぎる1日が終った。
ヒバリ:フォトギャラリー第371回他参照
ニシオジロビタキ:フォトギャラリー第338回他参照
シマゴマ:フォトギャラリー第296回参照
類似種の識別:オジロビタキとニシオジロビタキ参照
初歩のバードウォッチング:撮影参照
分類:ブッポウソウ目 ブッポウソウ科
全長:30.0cm
翼開長:70.5cm
分布:本州、四国、九州で夏鳥。
生息環境:平地~山地の林など。
食性:昆虫。
レッドリスト:
(EN)
指定:
フォトギャラリー:
第187回参照
撮影難易度:★★★★☆
ブッポウソウ
Oriental Dollarbird
Eurystomus orientalis
撮影日:2018年5月8日
撮影時間:15時53分26秒
シャッタースピード:1/250秒
絞り値:F7.1
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:石川県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:スズメ目 ムシクイ科
全長:12.0cm
翼開長:18.0cm
分布:主に四国、本州中部以北で夏鳥。
生息環境:山地の林など。
食性:昆虫、蜘蛛、木の実など。
フォトギャラリー:
第202回他参照
撮影難易度:★★★☆☆
エゾムシクイ(?)
Sakhalin Lief Warbler
Phylloscopus borealoides
撮影日:2018年5月8日
撮影時間:15時16分00秒
シャッタースピード:1/60秒
絞り値:F7.1
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:石川県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:スズメ目 ヒタキ科
全長:14.0cm
翼開長:22.0cm
分布:中部以北で夏鳥、それ以南で旅鳥。
生息環境:平地~山地の林。
食性:昆虫、蜘蛛、ミミズなど。
フォトギャラリー:
第185回他参照
撮影難易度:★★★☆☆
コルリ(上=雄若鳥、下=雌)
Siberian Blue Robin
Luscinia cyane
撮影日:2018年5月8日
撮影時間:14時59分12秒
シャッタースピード:1/40秒
絞り値:F7.1
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:石川県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2018年5月8日
撮影時間:14時37分38秒
シャッタースピード:1/60秒
絞り値:F7.1
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:石川県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:スズメ目 ヒタキ科
全長:12.0cm
翼開長:21.0cm
分布:全国で稀な旅鳥または冬鳥。
生息環境:平地~山地の林、公園など。
食性:昆虫、蜘蛛、木の実など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★☆
オジロビタキ(雄)
Taiga Flycatcher
Ficedula albicilla
撮影日:2018年5月8日
撮影時間:14時03分09秒
シャッタースピード:1/2500秒
絞り値:F7.1
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:石川県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2018年5月8日
撮影時間:14時01分45秒
シャッタースピード:1/1600秒
絞り値:F7.1
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:石川県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:スズメ目 ヒバリ科
全長:14.0cm
翼開長:不詳
分布:主に日本海側の島嶼部で少ない旅鳥。
生息環境:海岸、草原、農耕地など。
食性:種子、昆虫、蜘蛛など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★☆
ヒメコウテンシ
Greater Short-toed Lark
Calandrella brachydactyla
撮影日:2018年5月8日
撮影時間:13時04分40秒
シャッタースピード:1/800秒
絞り値:F7.1
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:石川県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
撮影日:2018年5月8日
撮影時間:13時04分36秒
シャッタースピード:1/1000秒
絞り値:F7.1
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:石川県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
ヒメコウテンシ オジロビタキ コルリ エゾムシクイ ブッポウソウ 民宿つかさ
第375回 2018年5月20日