今回は野鳥たちの食事に注目してみたい。ここに紹介するのはたまたま食性の似ている小鳥たちだ。
鳥影の少ない高低差数百メートルの山に徒歩で登り一旦反対側へ下りてまた勾配20度ほどの長い急坂を登り、この日やっとこさ撮れたのが酷い枝被りのウソ1羽という有り様。たかがウソだがこの1枚にはなかなかの労力が掛かっているから没にするのは忍びない。だが彼らの好む樹種を知っていればそういう木の所在をあらかじめ知ったうえでそこで待ち構えておけば良い訳で、こんなふうに闇雲に歩き回るよりもっと効率的に探鳥が出来るはずだ。
多くの小鳥たちが雑食性で肉食や草食にこだわらず何でも食べる事により飢餓を克服している。しかしほとんど昆虫も居ないし木の実も乏しい冬季はどうしているのだろうか。それが不思議だったがこのルリビタキが一つの答を教えてくれた。口にくわえているのは落葉の下に隠れていたハサミムシだ。昆虫などどこにも居ない様に見える冬場も、よく見れば目立たない所に隠れている。ルリビタキはそれを知っていて落葉や小石をひっくり返して貴重な食料をゲットしていた。我々人間から見れば食料にならない様な虫も彼らにとってはエビやカニの様なものだろう。
キツツキ科は木の皮の下に隠れている幼虫などを突っつき出して食べる。コゲラの写真は2年半前に撮影した在庫写真で、この時は青葉が茂る春だったから単に葉についた幼虫を採餌しているところかも知れない。後頭に赤い部分が僅かに有るから雄だと分かるが、この羽は隠れて見えない事が多いから、見えれば雄と分かるが見えないからと言って雌とは限らない。図鑑によれば日本ではコゲラはエゾコゲラ(北海道)、亜種コゲラ(本州中部以北) 、ミヤケコゲラ(伊豆七島の一部と屋久島)、シコクコゲラ(本州西部と四国)、ツシマコゲラ(対馬と隠岐)、キュウシュウコゲラ(九州)、アマミコゲラ(奄美諸島)、リュウキュウコゲラ(沖縄諸島)、オリイコゲラ(西表島)の9亜種に分類され、グローガーの法則通り南に分布する亜種ほど暗色で白斑の幅が細い。この個体は分布域からシコクコゲラと思われる。なお幼鳥は下嘴基部が淡黄色または淡褐色で足は灰茶褐色、虹彩は暗赤色だ。因みにコゲラも木の実を食べる。
ヒガラは図鑑によれば昆虫や種子を食べるが、この写真に写っている獲物は小さ過ぎて何なのかよく分からない。この時はしきりに木の幹を突っついていたからおそらく幼虫か何かを捕まえてくわえているのだろう。
越冬するどの野鳥にとっても厳しい冬を乗り切るのは容易ではないだろう。野鳥たちは高い運動能力を生かして暖地に季節移動するとは言え多くの個体が冬を越す事が出来ない。最も繁栄している様に見えるスズメでさえ自然界での平均寿命はたったの半年から1年という説が有るくらいだ。その冬ももう終り、待ちに待った春はすぐそこだ。「あと少しの辛抱だ。頑張れ!」と励まさずにはおれない。
分類:スズメ目 シジュウカラ科
全長:11.0cm
翼開長:17.0cm
分布:九州屋久島以北で留鳥または漂鳥。
生息環境:山地の林など。
食性:昆虫、蜘蛛、種子など。
フォトギャラリー:第8回第95回参照
撮影難易度:★★☆☆☆
ヒガラ
Coal Tit
Periparus ater
撮影日:2015年2月25日
撮影時間:15時00分34秒
シャッタースピード:1/1600秒
絞り値:F5.6
撮影モード:プログラムAE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:兵庫県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:キツツキ目 キツツキ科
全長:15.0cm
翼開長:26.0cm
分布:全国で留鳥または漂鳥。
生息環境:平地~山地の林など。
食性:昆虫、蜘蛛、木の実など。
フォトギャラリー:第6回参照
撮影難易度:★★☆☆☆
コゲラ(雄)
Japanese Pigmy Woodpecker
Dendrocopos kizuki
撮影日:2012年5月16日
撮影時間:11時45分51秒
シャッタースピード:1/320秒
絞り値:F5.6
撮影モード:絞り優先AE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:400
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
分類:スズメ目 ヒタキ科
全長:14.0cm
翼開長:22.0cm
分布:全国で漂鳥。
生息環境:平地~山地の林など。
食性:昆虫、木の実など。
フォトギャラリー:第42回第96回第104回第115回第165回第168回参照
撮影難易度:★★☆☆☆
ルリビタキ(雄)
撮影日:2015年2月14日
撮影時間:12時16分15秒
シャッタースピード:1/2000秒
絞り値:F5.6
撮影モード:プログラムAE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
Red-flanked Bluetail
Tarsiger cyanurus
分類:スズメ目 アトリ科
全長:16.0cm
翼開長:25.5cm
分布:九州以北で留鳥または冬鳥。
生息環境:平地~山地の林など。
食性:種子、芽、昆虫、蜘蛛など。
フォトギャラリー:第96回第142回参照
撮影難易度:★★☆☆☆
ウソ(雄)
Eurasian Bullfinch
Pyrrhula pyrrhula griseiventris
撮影日:2015年2月20日
撮影時間:13時04分30秒
シャッタースピード:1/640秒
絞り値:F5.6
撮影モード:プログラムAE
焦点距離:300mm(換算450mm)
ISO感度:800
撮影地:兵庫県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon AF-S NIKKOR55-300mm 1:4.5-5.6G ED VR
ウソ ルリビタキ コゲラ ヒガラ
第171回 2015年2月27日