また大阪南港野鳥園に行ってみたら、レンジャーの人からホウロクシギくらいしか居ないと言われた。いやはや僕にとっては充分過ぎる。ここでは絶滅危惧Ⅱ類など物の数では無いのだろうか。
大阪湾の95パーセントがコンクリートで護岸されており、この様な干潟は僅かしか無いそうだ。野鳥達にとってはそこに集まるしか無いのだから、我々にとってはそこに行きさえすれば多種多様な水鳥に会える確率が高い訳だ。しかし単純に喜ぶ気分では無い。比較的容易に絶滅危惧種に会えたとしても、彼らには他に行く所が僅かしか無いという事の裏返しだからだ。
ホウロクシギは毎年の様に春と秋ここを訪れているそうだ。単独行動が多いらしく、この日も1羽しか居なかった。日本のシギの中では最大種で、姿も鳴き声もダイシャクシギに似ているが、腹部が褐色なので見分ける事が出来る。この様にカニを捕えて、足をちぎってから食べる。ようやくレフレックスレンズが実力を発揮してくれて、ヌケの良いシャープな画像が得られた。色収差の補正も不要で元画像に近い。かなりどんよりと曇っていたのでシャッター速度は200分の1秒だが、かたくなに三脚を使わない僕はカメラを観察窓の枠に押し付けて何とか手ブレを抑えた。
遡る事その1ヶ月余り前、チュウシャクシギの群れは例のシベリアオオハシシギと一緒にいた。シベリアオオハシシギは微妙に食性と採餌方法が異なるせいか採餌の時はほとんど別行動だったが、満腹になるとまたチュウシャクシギに合流していた。ひとまわり小さく1羽だけ色味の異なるシベリアオオハシシギは、遠目にも容易に見分けがついた。チュウシャクシギの嘴はホウロクシギに似て下に向かって湾曲している。
オオソリハシシギは逆に採餌の時はシベリアオオハシシギと競合している様だったが、混群にはならず数羽で群れていた。シベリアオオハシシギより少し大きく褐色味も淡い印象だが、遠目には見分けがつきにくく随分と惑わされた。嘴がわずかに上に反っているのが特徴だ。メインで狙った訳ではないのでちゃんとした写真が撮れておらず、ピントのボケた元画像をありったけのツールで画像処理してみた。
これらのシギは渡りの距離が長く、日本を遙かに通り越して行ってしまう。彼らにとっては日本列島など小さな島でしかなく、夏は北半球のシベリアから冬は南半球のオーストラリアまで地球規模で移動するとされる。南半球は北半球と季節が逆だから、これらのシギは世界のどこにいても冬鳥になる事がない。餌が減る冬季を避ける代償として、赤道を跨ぐ長距離を移動する訳だ。
自然界で生き残るのは想像以上に大変な様だ。普段は幸運に生き残った鳥たちしか目に触れないから厳しさに気付かないだけだ。今後も生き残れる保証すら無い彼らの陰には、残念ながら生き残れなかった者が無数にいた筈だ。そんな野鳥たちを僕は静かに見守るしか無い。
シベリアオオハシシギ:フォトギャラリー第46回・第47回・第48回参照
初歩のバードウォッチング:生息環境参照
分類:チドリ目 シギ科
全長:39.0cm
翼開長:70.0cm~80.0cm
分布:全国で旅鳥。
生息環境:海岸、干潟、河口など。
食性:ゴカイ、貝類、甲殻類など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
オオソリハシシギ
Bar-tailed Godwit
Limosa lapponica
撮影日:2010年4月26日
撮影時間:12時00分44秒
シャッタースピード:1/400秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:400
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:チドリ目 シギ科
全長:42.0cm
翼開長:76.0cm~89.0cm
分布:全国で旅鳥。
生息環境:海岸、干潟、農耕地など。
食性:カニ、カエル、昆虫など。
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★☆☆
チュウシャクシギ
Whimbrel
Numenius phaeopus
撮影日:2010年4月24日
撮影時間:14時39分59秒
シャッタースピード:1/320秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:チドリ目 シギ科
全長:63.0cm
翼開長:110.0cm
分布:全国で旅鳥。
生息環境:海岸、干潟、水田など。
食性:カニ、エビなど。
レッドリスト:(VU)
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★☆
ホウロクシギ
Far Eastern Curlew
Numenius madagascariensis
撮影日:2010年6月1日
撮影時間:15時34分48秒
シャッタースピード:1/200秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:1000mm(換算1500mm)
ISO感度:800
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ホウロクシギ チュウシャクシギ オオソリハシシギ
第50回 2010年7月13日