今回はオオタカとハイタカの同定について取り上げてみた。ご覧の様に幼鳥はともかく成鳥は本当に見分けが付きにくいのだ。最も大きな違いは大きさで、全長はオオタカ雄がハシボソガラス大、オオタカ雌がハシブトガラス大、ハイタカがキジバト大ではあるが、個体によってはオオタカの雄とハイタカの雌にはあまり差がないので、上空高く飛んでいると大きさだけでは判別しにくい。まして写真になってしまうと大きさは分からないから厄介だ。どちらも初列風切の長い分離羽は6本だし、色や横斑も極似している。僅かな違いはの形で、オオタカは扇型、ハイタカはバチ型に角ばって細長いとされるが、大きな違いは無い様に思える。オオタカの方が胴体が太いとされ、ハイタカは比較的スマートらしいのだが、見る角度によるから決定打にはならない。オオタカ成鳥の胴体の横斑は細くて胴体が白っぽく見えるし、初列風切の内側から次列風切にかけての横斑がオオタカはやや薄いという特徴があるが、光の加減によって濃くも薄くも見えてしまう。オオタカの方が濃いとされる白い眉斑も下から見上げる角度では確認出来ないし、個体差もあるらしい。羽ばたき方はオオタカがゆったり大きく羽ばたくのに対し、ハイタカは浅くパタパタ羽ばたいて滑翔というパターンを交互に繰り返すらしいが、オオタカも滑翔するし明確な相違点ではない。結局、これらを総合的に見て判断するしか無い様だ。
2枚目の写真はオオタカ成鳥だ。1枚目と比較する為に敢えて似たアングルの写真を選んだ。換羽の為か初列風切が欠損していて数が合わないが、ほぼ全ての特徴がオオタカのものだ。問題は1枚目だ。色、尾の形、眉斑の特徴から九分九厘ハイタカ幼鳥と判断したものの、大きさ、胴体の太さ、初列風切の内側と次列風切の横斑が薄い等の特徴はオオタカ成鳥に極似しているので100パーセントの確証がない。残念ながら画質もあまり良くないし、1枚目と2枚目とを見比べるにつけ、いかにオオタカとハイタカの同定が難しいかを実感する。
どちらも希少種で飛翔時間も短いから滅多に見られないし、直線的な飛翔で瞬く間に通り過ぎてしまう事が多いので撮影難度は高い。中型から大型の野鳥だから、運良く上空をソアリング(螺旋状に帆翔)していればファインダーに捉えるのは比較的易しいが、かなりの高度に達して豆粒にしか見えない事もある。いずれにせよ、まず生息地を発見出来なければどうしようもない。特にハイタカはこのエリアでは冬鳥っぽくて、この時を最後に姿を見ない。
ところで「アリー効果」という言葉がある。種の個体密度が一定の割合以下に低下すると急速に絶滅に向かう法則の事だそうだ。オオタカもハイタカも準絶滅危惧だから、いつ何時「一定の割合」を割り込んでもおかしくない。オオタカかハイタカか、どちらにせよそんな希少種が大阪の空を舞っているのは率直に嬉しいが、喜んでいられるのが今の内でない事を願う。
最後に私事だが、去年の10月末で失業者となり時間的余裕が出来たお陰で数々の野鳥撮影に成功し、このギャラリーを充実させる事が出来たと自負している。このたび幸か不幸か再就職を果たしたので今後野鳥と出会う機会は減ってしまうと思うが、この1年の出来事は生涯忘れ得ぬ貴重な体験となった。ここに「大阪の野鳥」1年間の撮影記録を留めて置こう。大阪府下の山間部周辺だけで54種に達した。その内5種がレッドリストに名を連ねる。

「大阪の野鳥」撮影記録 2008年11月30日~2009年9月24日
ウ科:カワウ
サギ科:ゴイサギ、アマサギ、ダイサギ、アオサギ
カモ科:カルガモ
タカ科:ミサゴ、ハチクマ、トビ、オオタカ、ハイタカ、ノスリ、サシバ
キジ科:キジ
ハト科:キジバト、アオバト
カッコウ科:ホトトギス
カワセミ科:カワセミ
キツツキ科:アオゲラ、コゲラ
ツバメ科:ツバメ、コシアカツバメ
セキレイ科:キセキレイ、セグロセキレイ
ヒヨドリ科:ヒヨドリ
モズ科:モズ
ツグミ科:ジョウビタキ、シロハラ、ツグミ
ウグイス科:ヤブサメ、ウグイス、センダイムシクイ
ヒタキ科:キビタキ、オオルリ、コサメビタキ
エナガ科:エナガ
シジュウカラ科:ヒガラ、ヤマガラ、シジュウカラ
メジロ科:メジロ
ホオジロ科:ホオジロ、カシラダカ、ミヤマホオジロ、アオジ
アトリ科:オオカワラヒワ、カワラヒワ、マヒワ、イカル、シメ
ハタオリドリ科:スズメ
ムクドリ科:ムクドリ
カラス科:カケス、ハシボソガラス、ハシブトガラス

「近畿の野鳥」撮影記録 2009年9月25日(大阪の野鳥との重複分を除く)
コウノトリ科:コウノトリ
ヒタキ科:エゾビタキ
撮影地:兵庫県
分類:タカ目 タカ科
全長:雄50.0cm 雌58.5cm
翼開長:105.0~130.0cm
分布:四国の一部、本州、北海道、九州で繁殖。留鳥。
生息環境:森林。都市植林。
食性:鳥類、両生類、小型哺乳類など。
レッドリスト:
準絶滅危惧(NT)
フォトギャラリー:第1回第12回第15回第24回参照
撮影難易度:★★★★☆
オオタカ(成鳥)
Northern Goshawk
Accipiter gentilis
撮影日:2009年8月19日
撮影時間:15時58分40秒
シャッタースピード:1/2000秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
分類:タカ目 タカ科
全長:雄32.0cm 雌39.0cm
翼開長:60.0~79.0cm
分布:本州以北で留鳥または冬鳥。
生息環境:森林、農耕地。
食性:鳥類、小型哺乳類など。
レッドリスト:
準絶滅危惧(NT)
フォトギャラリー:初登場
撮影難易度:★★★★☆
ハイタカ(幼鳥)
Eurasian Sparrowhawk
Accipiter nisus
撮影日:2009年4月12日
撮影時間:14時01分52秒
絞り値:F11.2
撮影モード:マニュアル
焦点距離:600mm(換算900mm)
ISO感度:1600
撮影地:大阪府
使用カメラ:NIKON D40
使用レンズ:Nikon ED AF NIKKOR 70-300mm1:4-5.6D
:Nikon Teleconverter TC-201 2×
ハイタカ オオタカ
第30回 2009年10月7日