幻の絶滅鳥カンムリツクシガモ。イラストギャラリー第3号ミヤコショウビンに続き絶滅種を再現してみた。図鑑によれば1822年(※)に北海道で捕獲され将軍に献上されたという記録が残っている。江戸時代の写生画も複数現存している事などから日本にも分布していたと考えられている。1960年代から80年代にかけてロシア、中国、朝鮮半島で不確実なものも含めて観察例が有り生存の可能性もゼロではないが、それから数えても既に数十年が経過してしまっているから望みは薄い。それでもいつの日か来るかもしれない奇跡の再発見という夢のシーンを、ツクシガモをベースにしてそれこそ夢中になって思い描いた。日本に現存する雌雄2体の標本は飾り物の剥製の様だ。何しろ確たる生き証人は居ないので食性などは不明だが、嘴の形状はツクシガモ(海草、甲殻類)よりヨシガモ(種子、根、海草、水生動物)やキンクロハジロ(水草、貝類、甲殻類、水生昆虫)などに近い様に見える。
一度絶滅してしまったものは決して元には戻って来てくれない。こうしてどんなに精巧な想像図を描こうとしても所詮フェイクでしかなく本物には遠く及ばない。絵に命を吹き込む事は現実には出来ず、依然として幻は幻のまま、夢は夢のままだ。

2016年1月1日追記;
※一部図鑑に1882年との記載が有るが1882年は明治15年という事になるため誤植と判断し本文とキャプションを修正した。


ツクシガモ:フォトギャラリー第38回第39回第77回参照
ヨシガモ:フォトギャラリー第72回参照
キンクロハジロ:フォトギャラリー第161回参照
分類:カモ目 カモ科
全長:70.0cm
翼開長:不明。
分布:北海道で1822年(※)。
生息環境:不明。
食性:不明。
レッドリスト絶滅(EX)
カンムリツクシガモ(雄・想像図)
Crested Shelduck
Tadorna cristata
カンムリツクシガモ
第4号 2015年1月1日