2年前撮影した野生個体「愛媛」に再会したくて、また「兵庫県立コウノトリ郷公園」に行って来た。
前回は雛が巣立ちした直後だった為かもう少し痩せていた様に感じる。
水田の真ん中にいた前回と異なり今回は餌付け場にやって来たところを撮影したもの。こういう写真で良ければ撮影難易度は星1個だ。野生を失いつつあるのではないかと少し心配になった。しかし豊岡の環境が気に入って住み着き、健康的に生きているならとやかく言う事も無いだろう。
500ミリでちょうど良い距離だったのでテレコン無しでの撮影を選んだ。単焦点レンズで、しかも反射式のレフレックスレンズだから色収差の無い奇麗な絵が撮れた。レフレックスとは言え前玉などにレンズを使用しているものの、光学的に収差は少ないはずだ。勿論屈折式の一般レンズでも屈折率の異なる凸レンズと凹レンズの組合せと多層膜コーティングで色収差は補正されている。だが引き伸ばして見た時に理論的に色収差が無い反射式には敵わないと思う。
ここでは地元農家で収穫された米などの農産物が直売されている。僕は以前「(食物連鎖の頂点に立つ)希少動物の存在自体が健全な生態系の裏付けであり、安全な農産物の証明に成る筈だ」と提唱した事が有る(フォトギャラリー第20回参照)。同じ事を考え実行に移した人達がここにいる。コウノトリはタカ科等と同様、食物連鎖の頂点近くに位置する肉食の鳥だ。地元農家の協力で化学肥料や農薬の使用を抑えた農法で、コウノトリを頂点とする生物が生きて行く為に必要な生態系が維持されている。それがそのまま人の口に入る農産物に反映されるのだから、食の安心と関連付けてPRすれば地域おこしに生かせるのではないかというアイデアだ。この米を買って来た。何か特別な味がするという訳ではないが、趣旨の理解が広まり、よく売れているというのが嬉しい。
自然農法の農産物が売れるとなればそれがまたコウノトリの野生復帰にプラスに働く「連鎖」になるだろう。周辺に餌が豊富なこの時季は餌付け場に舞い戻る放鳥個体が少ないと聞いた。実はこの翌日、放鳥個体の雛が巣立ったとのニュースが報じられ、タッチの差で見逃してしまったが、いずれコウノトリ自体が珍しくも何ともないという時代になればと思う。
分類:コウノトリ目 コウノトリ科
全長:112.0cm
翼開長:220.0cm
分布:全国で不定期。
生息環境:河川、池、水田、干潟など。
食性:魚類、両生類、爬虫類、小型哺乳類、昆虫など。
レッドリスト
絶滅危惧ⅠA類(CR)
指定:
特別天然記念物
フォトギャラリー:第27回第31回第51回参照
撮影難易度:★★★★★
コウノトリ(野性個体・雌)
Oriental Stork
Ciconia boyciana
撮影日:2012年7月8日
撮影時間:5時31分22秒
シャッタースピード:1/200秒
絞り値:F16
撮影モード:マニュアル
焦点距離:500mm(換算750mm)
ISO感度:200
撮影地:兵庫県
使用カメラ:NIKON D5100
使用レンズ:Nikon Reflex-NIKKOR・C 1:8 f=500mm
コウノトリ
第86回 2012年7月21日